FEAUTURE特 集
小さな驚きカンパニー
カチカチアイスに"魔法のスプーン"
17.06.15
カチカチに凍った
アイスクリームが
すぐに食べられる
魔法のスプーンを開発した
驚きカンパニーがあります。
アイスクリーム専用の
スプーンでありながら、
そこには最先端の技術が
盛り込まれていました。
夏。
冷たいものがほしくなる季節。
温暖化の影響か、
国内のアイスクリームの売り上げは年々上昇。
特に脂肪分が多い濃厚な商品が人気だが、
時に、こんな思いをしたこともあるのでは?
アイスクリームを食べる
岡田愛マリーアナウンサー「いただきます」
「ん、硬くてスプーンが入りません!何とかして?」
その問題を解決したのが、
岐阜県中津川市にある鈴木工業。
金属加工の老舗企業で、アイスクリームを
作っているわけではなさそうなのだが・・・
「こんにちは。今日はよろしくお願いします」
(岡田愛マリーアナウンサー)
社長の鈴木正樹さんが差し出したのは・・・
スプーン!?
「これで、試してみてください。」
(鈴木工業 鈴木正樹社長)
「カチカチですね、これがなんとかなるんですか?」
(岡田愛マリーアナウンサー)
「なんとかなります」
(鈴木工業 鈴木正樹社長)
「行きます。え?うそー!
溶けてますよ、すっとスプーンが入ってますよ」
(岡田愛マリーアナウンサー)
この黒いスプーン、
持った指先から体温が伝わり、
アイスクリームを溶かすのだ。
素材は航空機やロケットの部品にも使われる
炭素繊維強化プラスチック。
細くて丈夫な炭素の糸を樹脂で固めたものだ。
スプーンに熱が伝わる様子を
サーモグラフィで調べてみた。
指先から先端に向かって
見る見る熱が伝わってゆくのがわかる。
通常の木のスプーンでは、
温度にほとんど変化はない。
比べてみると一目瞭然。
熱伝導率の高さは金属以上だという。
確かにステンレスのスプーンで試してみても
体温は先の方まで伝わらない。
高い熱伝導率は、繊維の向きに秘密がある。
鈴木工業のスプーンは薄い炭素繊維の板を
何枚も張り合わせて作っている。
ただ繊維の向きがすべて同じだと
強度が弱く、折れやすい。
強度を保つため、
繊維の向きを格子状にしてみたこともあるのだが、
それでは、横向きの繊維が邪魔をして、
体温が先まで伝わらなかった。
そこで繊維の向きを斜めに重ねることで、
高い熱伝導率と強度を両立させることに成功した。
こうして完成した"魔法のスプーン"。
その実力は、こんな氷の塊だって、ご覧の通りだ。
社員にとっても、まったく畑違いの商品開発。
丸2年の間、毎日のようにアイスクリームを食べ続け、
テストを繰り返したという。
「最初の溶けこみと口に入れたときの滑らかさ
口どけがうちの商品の売りになっている。
(アイスクリームを)300個くらい食べました」
(鈴木工業 企画開発室 多賀雅彦さん)
また炭素繊維の板は硬く、加工が難しい。
そこで目をつけたのが、
ウォーターカッターという機械だ。
ノズルから高圧で水を噴射し、
その勢いで炭素繊維を切り取るのだという。
早速スイッチオン!
本当に硬い炭素繊維を切れるのか?
お見事!
1枚の炭素繊維の板から、
100枚近くを切り出すことができるという。
断面もなめらか、きれいに仕上がっている。
スプーン作りで得られた炭素繊維の加工技術は
新分野への道を拓いてくれたと鈴木社長は話す。
「この素材は近い将来金属に代わる用途が
増えてゆくと思ってますので、
航空宇宙産業にも参画してゆきたい」
(鈴木工業 鈴木正樹社長)
このスプーン、実は価格が
1本5000円するのですが、
発売から1年で約1200本売れました。
8割がプレゼント用だということです。