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2002年8月14日更新 |
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前回予告したように、私はこの夏ロンドンでホームステイして、向こうの英語学校に通った。今回から4回シリーズで「英語を学ぶ」ということについて私なりに感じたことを綴っていこうと思う。
ホームステイ先の家庭はロンドン北部のニースデンという閑静な住宅街にあった。こ の街では夜になるとキツネも姿を現わすことがあるらしい。私のホストファミリーは30代後半の若い夫婦だった。もう何年も日本人だけをゲストとして受け入れてきたそうだ。ご主人は手を合わせてお辞儀して「コンニチワ」と言って迎えてくれた。玄関を入ると芸者の写真。「今度は芸者ガールを連れてきてくれよ」と言われた。「OK」などと安請け合いしたら「バンザイ」と言いながら握手を求めてきた。相当な日本通なのかと思ったが、彼が知っていた日本語は「こんにち
わ」「芸者」「万歳」の三つだけだった。出会って3分で彼は全てを出しきったのだ。
特に万歳はお気に入りらしく、その後も何の脈絡もなく「バンザイ」を会話にさしはさんできて、私はその都度どう反応したらいいのかわからず当惑させられた。「君もバンザイをするのか?」ときかれたこともあったが、私は「たまには」ととても気のきかない返答をしてしまった。
また、ご主人の日本趣味を示すものとして、この家には30センチほどのほていさまの置き物が2体も鎮座していた。彼は得意げにその像を私に見せてくれたのだが、私は曖昧な微笑みを返しただけだった。だって水色がかっていて、怪しいことこの上ないんだもの。
今思えば、私のとった態度はホームステイする人間として間違っていた。日本人は手を合わせて挨拶しないとか、「万歳」はおめでたい席のシメとして行うもので、ご飯を食べている最中に「バンザイ?」などと言われたら食事がノドにつまったりして大変だとか、ちゃんと伝えるべきだった。水色のほていさまに関しても、「ちょっと現代の日本人の趣味とは違う」ぐらいは言ってもよかった気がする。彼が得意げにあの像を私に指し示したということは、きっと私以前にあの家にステイした日本人が無責任に「プリティー!」などと言ったのに違いないのだ。
せっかく相手が日本に好意を示してくれているのだから、気を悪くしたくない。だから何も言わないという態度は間違いだ。向こうはもっと日本のことを知りたがっていたのだ。違うところは違うとはっきり言うことで、初めて正しい理解が得られるはずだったのに・・・。
今は私の次にあの家にステイする日本人が、ちゃんといろいろなことを説明できる人であることを祈るばかりだ。 |

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