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2002年8月21日更新 |
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ロンドンで英語の勉強をしてきたというと「じゃ、クイーンズ・イングリッシュだね」などと言われる。確かに先生はクイーンズイングリッシュを話すのだが、生徒はロシア、ポーランド、イタリア、スイス、トルコ、ベネズエラ、スペイン、韓国、中国と、いろいろな国の人が来ていて、それぞれ国によってなまり方が違う。授業では生徒同士で話をする時間を多くもうけていたので、クイーンズ・イングリッシュよりも、世界にはいろいろな英語があるということを学びに行ったという面の方が大きかった。そして世界の人々と比較して、あらためて日本人の特殊性を思い知った。英語学習においてはいくつもの「日本人共通の問題」が横たわっていたのである。
英語学校の入学日には、クラス分けテストが行われる。まず筆記による文法テスト。私はかなりの高得点を収めることが出来た。とはいえ、会話の方はからきしダメだということは自覚していたので、クラス分けの前に正直に「出来るのは文法だけで、全然しゃべれません」と告白した。すると先生は「それは日本人共通の問題だね」と言って、私を少し低めの中級クラスにした。これが「日本人共通の問題」という言葉を聞いた最初だった。
中級クラスに行ってみて驚いた。みんなペラペラなのだ。多少なまりがあるにせよ、言い澱むということが全くない。低めのクラスのはずなのに!こんなにしゃべれるのに上級じゃないの?こんなペラペラな人たちより自分の方が筆記テストはできてたのか?うわっ、すげーな、日本の受験英語!でもそれって無意味?・・・と、頭の中ではいくつもの!と?が飛び交っていた。ショックだった。日本の英語教育はあまりに文法重視、会話軽視だという指摘は以前からきいていたが、まさかこれほどとは。「日本人共通の問題」と表現されてしまうのももっともだと思った。
会話力の中で、一番他の国の人たちとの差を感じたのは「連結現象」というものだった。
連結現象とは、「語末の子音とそれに続く語頭の母音がつながって発音されて、単語の切れ目がなくなること」である。例えば、「What are you talking about?」は「ワラユートーキナバウッ」になってしまうのだ。これが日本人にとっては英語を聞き取りづらくする最も大きな原因の一つになっている。一方、他の国の人たちにとっては、例えばフランス語のリエゾンのように、この連結現象はごく普通に行われているために苦にならないらしいのだ。
先生によればこれも「日本人共通の問題」の一つであり、「RとLの区別はできなくても何となく聞き取れるものだが、連結現象ははそうはいかない」という大きな問題なのだった。確かに「Twentieth anniversary」を「トウェニエサニヴァスリー」などと言われたら「サ」って何?ってことになりますよ、これは。でも、日本の英語の教科書じゃ、連結現象についてはひとことも触れていないんだもんなあー。
また一日中英語を話す中で、あらためて自分の英語には情けない特徴があることにも気付かされた。やたらにmaybeとsorryを使ってしまうのだ。そしてどうやらこれもまた私だけでなく、「日本人共通の問題」のようだった。
まずmaybe。私に限らず、言い切ることが苦手な日本人は「はっきりとしたことは言えないんだけれど」というニュアンスでこの言葉を使い出すと、クセになってしまう。しかしミルクティーの国でお茶を濁すのは不評だった。例えば「Will you go to the party?」ときかれて「Maybe」と答えてしまったりすると、「パーティーに行きますか」ときかれて「かもね」と答えているわけで、イギリス人にしてみれば「おまえはどうしたいんだ。意志が全然見えないじゃないか」ということになってしまう。
そして、sorry。日本人は「Excuse me」や「Please」や「Thank you」を使うべき場面で全て「Sorry」で済ませてしまうという傾向がある。日本人は普段から「ありがとう」と言うべきところで「すいません」を使うことが多い。それがそのまま英語に出てしまうというわけだ。
我々日本人にとって、英語習得の道のりはつくづく長く険しい。問題は山積みだが、とりあえず私は今、「すいません」と「ありがとう」の使い分けから始めてみようと思っている。
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