テレビ愛知

Vol.026 文:相澤伸朗  
「マルタ島短期語学留学レポート1「ひとりぼっちのヤングマン」」
2003年8月13日更新
 夏休みを利用して、マルタに2週間の語学留学をしてきた。といっても、「え、どこ、それ?」という方の方が多いかもしれない。
 マルタはイタリアの南、地中海に浮かぶ島だ。面積は、淡路島の三分の二ぐらいだが、立派な独立国だ。1814年から1964年までイギリス領であったため、公用語として英語を使う。公用語といっても、マルタ人は普段、アラビア語系のマルタ語を使っていて、英語は小学校に入ってから習うものなので結構あやしかったりする。
 私が初めて会話を交わしたマルタ人は、空港から乗ったタクシーの運転手だった。マルタに着いたばかりだというのに「Where will you go from Malta?」と訊かれた。マルタ観光のプランを訊いているようなのだが、それだったら「マルタから、どこへ行きますか?」ではおかしい。fromではなくてinを使うべきだろう。
 このfromの誤用はこの運転手だけではなかった。後日、半日観光ツアーに参加した時も、女性ガイドがカフェの前で「Have a drink from here」と言うのを耳にした。「from here」といっておきながら、テイクアウトするわけではなく、その店の中で飲んだのだった。とはいえ、日本でも「1万円からお預かりします」などと「から」を間違って使ったりするので、母国語だからと言って正しく使われるとは限らないんだけれども。
 発音もかなり変わっている。アラブ訛りなのだろうか?ちょっと聞いたことがないような訛り方をするので、本当に英語をしっかり学ぶのであればイギリスの方がいいと思うのだが、ヨーロッパの若者たちにとって、美しい海に囲まれている上、物価が安いマルタは夏休みの短期語学留学先として非常に魅力的な場所のようだ。私の滞在したホテルもヨーロッパ各国の高校生でいっぱいで、修学旅行の高校生でいっぱいの京都・新京極のホテルのような状態だった。
 語学学校ではそんな若い人たちが楽しめるようなイベントをいろいろ用意している。みんなでビーチでバーベキューしたり、船に乗って他の小さな島に渡ったり、夏や海を思う存分楽しむことができるのだ。そして暗くなると、船の上だろうと、小さな島だろうと、ビーチだろうと、必ずディスコパーティーになるのだった。
 「若いうちはやりたいこと何でもできるのさ」と言わんばかりに、ディスコパーティーで「YMCA」が流れたこともあった。イタリアの女の子たちが踊っていた振り付けが日本の西城秀樹さんの振り付けと対照的で面白かった。ヒデキさんの振り付けでは出だしの部分は正拳突きを相手のみぞおちに何発も叩き込むという感じのものだったが、イタリア風では左から右へ次々に人を指差していって「キミも、キミも、キミもヤングマン」みたいな動きの後、バスローブをハラリハラリを体の前で合わせ、それをまたハラリハラリと開くという感じの振り付けで踊っていた。日本のYMCAは「俺は強いぜ」という、いかにもギャランドウをワッサワッサ生やしてそうな男性的振り付けであったが、イタリアでは「キミも、キミも」でまず連帯感、そしてはだけるバスローブで女性の美しさを表現し、その女性の美しさに、若さを象徴させているようだった。
 だが、サビの「YMCA」のところは全世界共通だ。周りは全てヨーロッパの若者。アジア人は私一人という状況だったが、ともに「Y!M!」と歌い踊ることで、ヨーロッパの若者たちと一つになる気分を味わうことが出来たのだった。素晴らしいYMCA!まさに「ヒデキ、感激」だった。

  しかし、それもほんのつかの間だった。何十人の中で私だけを左右逆に出してしまったのだ。たった一人のアジア人がたった一人間違えたのだ。ものすごく恥ずかしかった。「ヒデキ、赤面」だった。これが日本だったなら私以外にも絶対Cを左右逆に出す者がいたはずだ。日頃アルファベットに慣れ親しんでいるヨーロッパの人たちとの間に大きな壁を感じたのだった。

この「ヨーロッパの人たちとの間の大きな壁」は教室でも相澤の前に立ちはだかります。次回「ワラをも掴む思いで健康をアピール」をお楽しみに!
Nobuo Aizawa

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