FEAUTURE特 集
小さな驚きカンパニー
名古屋で生まれた"消えるインク"
17.04.27
新年度が始まる春、
この時期、特に売り上げが
伸びるのが筆記具です。
この筆記具の分野で
今も世界中で売れ続けている
大ヒット商品を開発した
驚きカンパニーが
名古屋にありました。
名古屋市内の筆記具売り場。
発売から10年たった今も
圧倒的な人気を
誇り続ける筆記具がある。
消せるボールペン、「フリクションボール」だ。
累計販売本数は19億本以上!
このロングセラーのインクを
生み出したのは、
名古屋の会社だった。
その会社とは
名古屋市昭和区にある
パイロットインキだ。
このパイロットインキ、
重い瓶入りのインクを
全国各地に発送するため、
日本の中央、名古屋に工場が
作られたのが始まりだ。
伊藤さんが手にしたのは水色の紙。
フリクションボールのインクが
塗ってあるという。
うしろで何やら
ごそごそしている伊藤さん。
すると...
驚きCG
「すごいすごい、色が変わりました」
(実験)
種は簡単。
伊藤さんが
持っていたのはドライヤー。
インクが消えたのは、
裏から熱を加えたからだ。
一体何度で消えるのか?
黒いインクが消える様子を
サーモグラフィーで調べてみた。
40度ではまだ消えない。
やがて中心部分は赤色に。
60度を超えたあたりで
インクが消え始めた!
文字を消す場合も同じ。
およそ60度の摩擦熱で消えている。
消えるインクの正体は、
色がついたカプセル。
カプセルの大きさは、
実際には直径約3ミクロン程度。
このカプセルが
透明の液体一杯に漂っていて、
全体に色がついているように
みえるのだ。
さらに、
そのカプセルの中には
A、B、C、3つ薬品が入っている。
AとBは、
結合すると
発色する性質があるのだが、
Bの薬品は、
周りの温度が60度以上になると、
Aから離れてCとくっつき、透明になる。
わずか直径3ミクロンの
カプセルの中に、
こんな複雑な仕組みが入っていたのだ。
熱すると透明になるのなら、
冷やすとどうなるのか?
「ドライアイスを用意しました
上に載せると、おお、ほんのりと
浮かび上がってきましたよ」
(岡田アナ)
実はマイナス20度以下で
インクの色はもとに戻る。
温度で色を、
自由にあやつることができるのだ。
そのアイデアのきっかけは、
県内の、ある観光地だったという。
「ある開発者が
香嵐渓に行ったんですね。
その香嵐渓で
緑の葉が赤に変わる。
その紅葉を見て、
この色鮮やかな色の変化を
ビーカーの中で
再現したいということで
開発が始まりました。」
(パイロットインキ文具事業部
伊藤雅夫課長)
ところが当初、
消えるインクは、
筆記具として
使われることはなかった。
お湯を入れると
模様が浮き出るマグカップ。
こうした玩具などにしか
使い道がなかったという。
筆記具として使うには、
問題があったからだ。
消えるインクを
ボールペンに使うには、
ペン先をインクが
通り抜けられないとならない。
当時、
カプセルの大きさは約15ミクロン。
これを小さくするのに、
10年以上かかったという。
「マイクロカプセルのサイズを
5分の1のサイズにすることで
ボールペンに
ようやくできるようになった。」
(パイロットインキ文具事業部
伊藤雅夫課長)
完成した
フリクションボールは、
まずボールペンで
学校の授業を受ける
フランスで大人気に。
今ではサインペンや色鉛筆など
20種類の関連商品が
世界中で販売されている。
「消える筆記具という
ジャンルを作りたいと
思ってたんです。
もっといろんな人とか、
いろんなシーンで
使ってもらえるように
ラインアップを充実させて
行きたいと思っています」
発売から10年、
フリクションボールの
技術は年々更新されていて、
例えば「消せる色鉛筆」は
消えるインクを液体から
個体にかえる技術が
新たに開発され、
完成したという事です。