FEAUTURE特 集
小さな驚きカンパニー
常滑焼が乳がん患者の夢かなえる
17.08.31
日本人の14人にひとりが
発症すると言われる乳がん。
治療のために胸を失った
女性の悩みを解決したのは
常滑焼の技でした。
愛知の伝統産業、「常滑焼」。
この技術を使い、
新分野を開拓した会社があった。
滑らかな地肌が特徴の常滑焼には、
石膏の型に粘土を流し込んで
成形する技法がある。
常滑市のマエダモールドは、
石膏の型づくりの技術を使い
まったく新しい商品を開発した。
その商品を見せてもらった。
「すごくリアルですね!」
(岡田アナ)
人工乳房。(じんこうにゅうぼう)
乳がんで胸を失った患者のための商品だ。
シリコン製で、常滑焼とは関係が
ないように思えるのだが・・・
「なんでこれを作ろうと思ったんですか?」
(岡田アナ)
「こうしたものが石こう型から
出来ていると知ったんです」
(マエダモールド 前田茂臣社長)
実は人工乳房も、石膏の型を使って作られる。
その点が、常滑焼と同じだったのだ。
作り方を見せてもらった。
まずは3Dスキャナーで患者の体を測定。
このデータを参考に
失った胸の形を復元して粘土で原型を作る。
そしてここからが常滑焼の技術の出番。
粘土の上から石膏をかけていく。
型をとるのは工場長の末永さん、
すると突然・・・
石膏の中に手を突っ込んだ!
いったいなぜ?
「泡が表面に入らないように触っています」
(職人)
よく見ると、
末永さんの手のまわりにプツプツと
泡が浮かんでいる。
製品の表面にでこぼこができないよう、
原型をなでながら、気泡をなくしていたのだ。
これは常滑焼で培われた技だ。
固まった石膏の型にシリコンを流し込み、
色を塗ったら完成だ。
見た目がリアルでなければ患者には使ってもらえない。
一体どうやって塗っているのか?
「肌色をベタ塗りするのかと
思ったんですけど、実際は7色?」
(岡田アナ)
使う塗料は赤や青、緑などあわせて7色。
トントンと筆を置くように色を付けていく。
すると...
「だんだんとほんのり色が付いてきましたね」
(岡田アナ)
作業すること3時間、完成したのがこちら。
「すごい!リアリティが本当にありますよね」
(岡田アナ)
血管が透けて青くなっている部分や、
赤くまだらになっているところも再現している。
患者一人一人の肌の色に合わせて塗るという。
社長のもとには、患者からこんな要望も...
「ウエディングドレスを着たい
そういった人口乳房も作らせていただきました」
(マエダモールド 前田茂臣社長)
依頼主は結婚式を控えた女性。
乳がんで胸を失い、胸元の開いたドレスが
着られなくなったという相談を受けた。
そこで作ったのが厚さ0.2ミリの「のりしろ」。
これを地肌につけてみると...
「ちゃんとくっついてますね、
こんなに馴染むんですね!」
(岡田アナ)
間近で見なければ境目はほとんどわからない。
依頼した女性も、念願のドレスを着て
式を挙げることができたという。
評判は医療関係者や患者の間で広まり、
今や年間150個を販売。
2017年に入ってからはこんな依頼も...
「小耳症の子どもで
耳を作ってほしいという方に。
新しいことをやる時には
不安あるとは思うんですけど、
それは気にせずに
挑戦していきたいと思っています」
(マエダモールド 前田茂臣社長)
マエダモールドは今後、
体のあらゆる部分の
人工皮膚を復元できるよう
商品の開発を続け、
その技術を
より多くの人たちに
役立てたい考えです。