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WHY?なぜ田原市は"農業王国"なのか
17.09.01
農林水産省によりますと、
2017年、農業や畜産業での売り上げ額を示す
「農業産出額」の市町村別の
全国ランキングで
田原市が総額820億円でトップとなりました。
2位の茨城県鉾田市とは100億円の差をつけています。
なぜ、田原市は農業王国となったのでしょうか?
農業産出額全国1位を誇る田原市。
その産出額の約4割が"花き"で、
中でも、「輪菊」が主力だ。
愛知県の統計によると、県全体の花き販売額が
減少する一方、輪菊は200億円前後をキープしている。
なぜ、田原市の輪菊は売れ続けるのか?
「客の割合が葬儀をメインとしている業者が多い、
(客に)グループ化された大手の葬儀会社が増えているということで、
(品質が)そろった商品をまとめて買えるというところが、
特に大手の客に受け入れられている。」
(JA愛知みなみ花き販売課 荒木重光係長)
田原市の輪ギクが集まる集荷場。
農家が次々と商品を持ち込む中、
箱をあけ中身をチェックする人の姿が...
「1カ月に1回役員が出て、
全員の荷物を抜き取って検査します」
(JA愛知みなみ輪菊部会・鈴木亮吉販売委員長)
鈴木さんが役員を務めるのは、
菊農家で構成する「輪菊部会」。
所属農家は、約800戸と全国最大級。
集荷場には、専門の検査員を配置し、
花の形や虫食いの最終チェックをするなど、
徹底した品質管理が行われている。
「他の産地で輪菊だけの
検査員はなかなかいない」
(JA愛知みなみ輪菊部会・鈴木亮吉販売委員長)
部会では、生産する品種を季節に合わせて
2、3種類に絞り、安定的な出荷量の確保も図っている。
「この人数(農家約800戸)だからこそ
年間通し安定した品質と数量を供給できる
(菊輪部会の)最大のメリット」
(JA愛知みなみ輪菊部会・伊藤和彦代表)
さらに、個々の農家では新技術の導入も進んでいる。
「あれが、今年の2月に入れた環境モニタリング装置です。」
(輪菊農家・夏目佳史さん)
これは、菊の生育に重要な「温度」と「湿度」、
そして光合成を促し生育をよくする「二酸化炭素」の濃度を
測定する装置。
そのデータは、スマートフォンやパソコンで
どこにいても確認できる。
夏目さんは、この装置とともに二酸化炭素濃度を高める
「炭酸ガス発生器」も導入。
ハウス内の環境を整えることで、
品質と収穫の量がアップし、導入後、売り上げが10%ほど伸びたという。
「私(39歳)と同じぐらいの若い世代を中心に
炭酸ガスを入れたり、いろいろと挑戦して、
収量を増やすような努力をみんなでやっている。」
(輪菊農家・夏目佳史さん)
若手の就農者が多いのも、田原市の特徴だ。
国の調査によると、田原市の49歳以下の農業従事者の数は、
全体の約26%と、全国平均を16ポイント近く上回っている。
大学を卒業後、キャベツ栽培農家を継いだ仲谷さんも
その1人だ。
「(田原市の農家は)1年間を通して
何かしらの収入が得られることがわかりまして、
ぶっちゃけ言って(親の)通帳を見て継ごうかなと思った。」
(キャベツ農家・仲谷吉弘さん)
温暖な気候から、1年中作物の栽培ができる田原市。
販売金額が年間1000万円以上の家族経営の
農家が多いことから、
後継者へのバトンタッチも比較的スムーズに行われている。
キャベツ栽培は、苗を植える自動定植機など
機械の積極的な導入で省力化が進められていて、
規模拡大がしやすいという。
仲谷さんも今年、耕作放棄地を借り受け、農地を広げた。
「これからはもう少し、機械を買ったりして、
出荷の形態を整えるなどしたい。
今よりも稼ぐ」
(キャベツ農家・仲谷吉弘さん)
日本最大級の農家組織による
市場ニーズへの対応、
また、新技術の導入や農地の拡大で
「稼ぐ農業」を目指す若手の活躍が
田原市を農業産出額
全国1位に押し上げる
要因になっているようです。