FEAUTURE特 集

金スぺ

窯業支えた"貨車移動機"修復へ

18.06.15

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古くから焼き物の
産地として知られる
岐阜県多治見市で、
約40年も放置された
鉄道車両があります。

この車両を甦らせようと、
滋賀県の
ある鉄道ファンが
立ち上がりました。

一体、
どんな車両なのでしょうか。
 

今にも朽ち果てそうな1台の鉄道車両。

「貨車移動機」と呼ばれる車両です。

「全国で確認されているのは、
 この1両だけになります。」
      (笹田昌宏さん)

1949年に国鉄が製造したこの車両。

多治見市にある耐火物メーカーのTYKが、
耐火れんがなどを運ぶために、
東濃鉄道笠原線・市之倉口駅まで運搬していました。

笠原線は、多治見市中心部から笠原町までを結ぶ
約4.6キロの路線で、陶磁器輸送や
地域住民の足として親しまれてきました。

しかし、
トラック輸送の普及で次第に利用者が減り
1978年廃線となりました。
 
廃線から40年たった2018年、
この車両を甦らせようと
1人の鉄道ファンが動き出しました。

笹田昌宏(ささだまさひろ)さんです。

笹田さんは、滋賀県在住の医師ですが、
全国各地で消えゆく鉄道車両の保存にも
取り組んでいます。

「昨年はじめて見に来たときに
 "まだある"という感じで。
 なにしろボロボロですから、
 なくなってるかもと覚悟したがまだあった。」
          (笹田昌宏さん)

TYKの工場に放置されていたこの車両を、
引き取ったのが幸兵衛窯の七代目、
加藤幸兵衛(かとうこうべい)さんでした。

「(自分自身が)
 古い機関車が大好きで。
この車両が(TYKの工場の)
草むらにほっぽり出してあったから
このままではちょっとかわいそうだと思ったのが
一番最初の印象です。」
      (加藤幸兵衛さん)

自ら加藤さんに修復を申し出た笹田さん。

ところが、思った以上に
車両の状態は良くありませんでした。

床の木材は腐り雑草が生え、
運転席は窓枠やドアが外れていました。

「想定していたより手強いです。 
 結構時間かかりそうかな。」
      (笹田昌宏さん)


そこで、笹田さんは、
一緒に作業してくれるボランティアの募集を
始めましたが、

残念ながら手伝ってくれる人が
名乗り出でこなかったため、
結局1人で作業することを決意しました。

「僕は過去にもボロボロになった車両を
 ペンキを塗ってきれいにしたことで、 
 運命が変わっていく車両を見ていたので。
 きれいにしてあげれば
 すごく大きな未来がありそうな気がして。」
      (笹田昌宏さん)

エンジンの修復は難しいということですが、
「車両をキレイにすれば、
 地域の人も関心をもってくれるはず」
と笹田さんは言います。

現存する唯一の旧国鉄時代の貨車移動機。

ボロボロだった姿は、笹田さんによって見事、
復活しました。

「あとは車両自体が持っている魅力で
 人にアピールしてくれると思う。」
      (笹田昌宏さん)

かつては多治見の窯業を支えた1台の鉄道車両。

40年の時を超えてよみがえりました。


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