FEAUTURE特 集
旬撮
旬撮 伝統の技・相撲のぼり
18.06.29
大相撲名古屋場所を前に
力士の四股名などが
書かれた「相撲のぼり」作りが
ピークを迎えています。
旬撮は
この「相撲のぼり」が
できるまでに密着しました。
力士や部屋の名前を染め上げた
「相撲のぼり」を作っているのが、
岐阜市の長良川沿いにある
創業140年以上の吉田旗店だ。
ここで、
本場所や地方巡業で使われる
相撲のぼりの6割が作られている。
吉田旗店の五代目で会長の吉田稔さん。
この道60年のベテラン職人だ。
その稔さんが、
今から長さ5.4メートルの布に
力士の四股名を書く。
「これから稀勢の里と書こうと思っています。」
(吉田旗店五代目・吉田稔会長)
稔さんは、下書なしで直接書き始めた。
「稀」という難しい字を
フリーハンドで書けるのは、
全国広しといえど、
書道師範代の腕前を持つ稔さんだけ。
「のぼりは下から上へ見上げますので、
上の方は枠よりも文字がはみ出る。
下は、はみ出ない文字を書いて
のぼりを立てるとちょうどそれで(しこ名が)
同じような大きさの文字に見えるわけです。」
(吉田旗店五代目・吉田稔会長)
稔さんの書いた文字を受けて、
次の「筒引き」作業をするのが息子で
社長の聖生さん。
もち米などを使った特殊なのりで
文字の縁取りをする作業だ。
「のりの部分を境にして、
色を差し分けられるような
堤防をつくっている状態です。」
(吉田旗店六代目・吉田聖生社長)
下絵の輪郭に合わせて2センチ幅で
のりを引かなくてはならず、
これには、約3年の修行が必要とのこと。
「のりの厚さも一定でないと
色が差し込んだりしますので、
同じ太さで置けるようになるまでに、
時間がかるというか訓練がいります。」
(吉田旗店六代目・吉田聖生社長)
その次は、手染め。
色を選ぶ時の基準は、
その力士のイメージだとか。
横綱・稀勢の里は、何色なのか?
使われたのは、「赤」。
染色を担当した聖生さんの妻によると、
休場続きの稀勢の里に
「元気を出してもらいたい」
との思いで赤を選んだという。
ただ、色決めるにもルールがあるようで・・・。
「力士の名前には、
黒星を連想させるので、黒は使いません。
そして、スポンサーさんの方は、
赤字経営につながるので、
赤という文字は使わないようにしています。」
(吉田旗店六代目・吉田聖生社長)
この後、色が乾いたら、
長良川の水で糊や汚れを落とす。
そして、天日干しをして完成。
「相撲のぼり」は縁起物で、
使うのは一回限り。
この名古屋場所に向けて、
約70本ののぼりを手がけた。
「ずっと、培われてきた技術、
そして思いなどを後世にも
伝えていきたいということで、
その技法をずっと守り続けているわけです。
自分たちでなくしてはいけないという
使命感に燃えてやっているわけです。」
(吉田旗店五代目・吉田稔会長)
この夏も職人たちの技が、
名古屋場所を盛り上げている。