FEAUTURE特 集

ザ特集

ゲリラ豪雨を短時間で予測(前)

18.09.05

33.jpg

台風や集中豪雨からの被害を
未然に防ごうと動きだしている人がいます。

それは「ゲリラ豪雨」の短時間での予測です。

局地的に洪水などの被害を引き起こす「ゲリラ豪雨」。
突発的に発生するため予測が難しいとされてきました。

そんなゲリラ豪雨を予測しようと開発されたのが
マルチパラメーター・フェイズドアレイ気象レーダーシステムです。

開発したのは、
名古屋大学の高橋暢宏教授です。

「どの雲で 実際強い雨が降っているか
 たちどころにわかるのが こういうレーダー」
(名古屋大学 高橋暢宏教授)


950本のアンテナを内蔵したこのレーダー。
雲に向かい、広角に電波を発射します。

従来のレーダーは、線で雲をなぞりながら観測するため、
全体像を捉えるのに時間がかかります。

一方新型のレーダーは、電波を広角に発射して、
30秒で雲の位置や高さなどを把握。

この雲の動きを追うことで、
ゲリラ豪雨を予測する仕組みです。

「ここで現れて、ひゅーっと落ちてくるようなところというのは、
 上で雨ができて、下に落ちてきている、そういう様子がわかる」
(名古屋大学 高橋暢宏教授)

「そういう原理を使うと、豪雨の、
 特にゲリラ豪雨みたいなものの予測っていうのが
 可能になるだろうというので、我々は研究をやっている」
(名古屋大学 高橋暢宏教授)

8月27日。

「おっ、降ってきちゃった。
 おーおーおー、大粒の雨が降ってきた。」
(名古屋大学 高橋暢宏教授)

この日、高橋教授は埼玉大学の屋上にいました。

「いや、これ見えてますよ。完全に見えてます。」
(名古屋大学 高橋暢宏教授)

しきりに、南の方角を気にしています。
どうやら怪しい雲を見つけたようです。

「あっちが南でしょ。
 だからあそこら辺、
 もう手前の雲でよくわからないけど
 もくもくしているところがあるね。」
(名古屋大学 高橋暢宏教授)

雲の大きさから、大雨を降らせる恐れがありました。

「背の高さから言うと 見た感じ10キロぐらい」
(名古屋大学 高橋暢宏教授)

実はこの日の夜、関東地方はゲリラ豪雨に襲われました。

東京・世田谷区付近では、午後8時から9時にかけて、
1時間に110ミリの大雨が降り、
道路や建物に浸水の被害をもたらしました。

高橋教授はその約4時間前に、
ゲリラ豪雨の兆候を見つけていたのです。

高橋教授がこのシステムの開発を始めたきっかけは、
2008年に起きた、ゲリラ豪雨による2つの事故でした。

東京の雑司が谷で雨水が増水し、
下水管の工事をしていた作業員5人が流された事故。

そして、ゲリラ豪雨による川の増水で
小学生など5人が犠牲となった神戸市の事故です。

高橋教授は、予測ができていれば、
この事故は防げたはずだと話します。

「上流だけで大雨が降って下流ではわからなかった
 だから痛ましい事故が起こった
 そういうことを考えると
 ゲリラ豪雨を予測することは
 非常に重要なことだと思っています」
(名古屋大学 高橋暢宏教授)

ゲリラ豪雨を予測できるこのシステム。
実用化までには、まだまだ課題がありました。

ページトップへページトップへ