FEAUTURE特 集
ザ特集
半世紀眠る巨大みそおけを再生
19.04.10
武豊町のみそ蔵に半世紀以上
眠っていた巨大な「みそ桶」。
再生に乗り出したのは日本で
たった1軒しかない大桶の専門業者でした。
愛知県でこよなく愛される、豆味噌。
木の桶で3年間熟成させて作ります。
ここは、武豊町で140年続く醸造元、中定商店。
明治時代の木の桶を100年以上使い続けています。
ところが最近困ったことが・・・。
「このような木桶醸造をいつまで
続けていけるのかなという悩みがある」
(中定商店 中川安憲代表)
原因は、桶の老朽化。
みその塩分で木の繊維が傷んで
綿の様になってしまった桶は、もう長くは持ちません。
新しく作ると数百万円はするそうです。
そこで、50年以上使っていない桶3つを解体し、
使える部材だけ集めて2つの桶を作ることに。
再生を請け負うのは、大阪・堺市の職人兄弟。
兄の上芝雄史さん、弟の藤井泰三さんです。
解体した桶はまるでタイムカプセル・・・。
底板の裏側には、100年以上前に
桶を納品した業者らしき名前が。
明治時代に中古で買ったという桶には、
シロアリで痛んだところを修理したあとも。
「この蔵に中古のおけを納品したとき
シロアリに食われた所を削って板を足して
その上から竹のタガを被せて
桶屋さんが仕事をしてるんです」
(藤井製桶所 上芝雄史さん)
昔から味噌や醤油の桶は、
酒蔵が30年ほど使った桶を下取りし、
再生して100年は使われます。
再生して欲しい桶の数は2つ。
しかし、思ったよりも
木材の状態が悪いことが分かってきました。
大阪・堺市にある藤井製桶所。
大桶を専門に作る製作所は、
今や全国でここだけです。
中定商店で解体された側板が並んでいました。
「悪い部分をもう1回解体して圧着する
割れてしまっている材はプレスして圧着
欠けてなくなっている部分はその分だけ足す」
(藤井製桶所 上芝雄史さん)
部材を補修したら、
桶を再び組み合わせるためのカンナがけです。
この台は「正直台」と呼ばれていて、
板を器用に動かしながら削っていきます。
側板は表面を綺麗にするだけではなく、
板に一定の角度を持たせます。
そうすることで桶の
丸い形に沿ったカーブを作れるのです。
直径約2メートルの桶を
組み上げる板の枚数は46枚。
数が限られた中古の木材を、
慎重に削る作業が続きます。
桶は上が広く、下を狭く作るため、
部材の形は下に向かって少しずつ細くなります。
少しでもいびつになると、
隙間ができて、その部分から漏れてしまいます。
依頼主が訪れました。
「これ うちのですか」
上芝さんが見せたのは、解体したものの、
割れたり腐ってしまって使えない部材です。
「最終的に選別して仕分けしたら
1本~1.3本くらいしかできない」
(藤井製桶所 上芝雄史さん)
「2本作ろうと思ったら小さくなっちゃう
ということですよね」
(中定商店 中川安憲代表)
再生できる桶はどうやら1本になりそうです・・・。