FEAUTURE特 集

ザ特集

翻弄される農家の不安

19.10.15



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ようやく愛知でのワクチン接種が決まりましたが
豚コレラの脅威に翻弄されてきた養豚農家は
今も不安を抱えています。


舟橋幸正さん(67)は養豚農家です。
小牧市と岐阜県中津川市の2つの養豚場で 
約800頭のブタを飼育していました。

しかし2019年4月、
飼育しているブタをすべて出荷して、
農場の経営を中断することにしました。

早期出荷といいます。

このまま経営を続けても、
豚コレラに感染してしまえば、
すべてのブタは、売らずに
殺処分しなければならなくなるからです。

岐阜県で豚コレラが見つかって、
丸1年が経とうとしていました。

各地で次々と感染の被害が確認される中、
舟橋さんの小牧の農場は、無事に
早期出荷を終えることができました。

「今はホッとした感じですね」
(養豚農家・舟橋幸正さん)

ところが・・・

9月5日、岐阜の農場で、
早期出荷の最中に豚コレラの感染が見つかりました。
約300頭のブタが出荷できなくなりました。殺処分です。

「情けない話だわ・・・。
 こんなもんかなって、何かすごく冷めてる」
(舟橋幸正さん)

殺処分から1か月。
舟橋さんが、大量の書類と格闘していました。

「この間、国と県が来て指導してもらったのと
 業者から前もってとった見積もりをいま合わせている。」
(舟橋幸正さん)

農場の経営再開に向けて舟橋さんは、
自力で豚舎に最新の防疫設備を整え、
豚コレラから身を守る考えでした。

その矢先・・・

「ワクチン接種を可能とする環境を整える。
 予防的ワクチンの接種はできないとされているので、
 これを可能となるように防疫指針の改定作業に着手します。」
(江藤拓農林水産大臣)


ただ国の改定案では、ワクチンを接種すると、
生きたブタは、接種地域内の農場にしか、
移動・流通できないことになっています。
舟橋さんの場合、岐阜の農場で子ブタを育て、
愛知の農場で成長したブタを管理して出荷してきました。
岐阜でワクチンを打つのなら、
愛知でもワクチンを打たなければ経営再開できないのです。

「愛知県は接種しませんよとなると
 持ってくるわけにいかない、生体は。
 岐阜に農場を持つこと自体が不可能となる。
 やることができない」
(舟橋幸正さん)


しかしその一方で、ワクチン接種への不安もあります。

10月2日、愛知県が養豚業者や小売業者などを集めて、
国の防疫指針案の説明会を開きました。
出席者から出たのは風評被害に対する不安でした。


「実際に(豚コレラが)発生したところのブタ肉が
 発生していないところと差別が出て
 価格がバランス崩れないことを願っている。」
(県食肉事業協同組合連合会・番場久雄事務理事)

「僕は怖いですね。
 市場の価格が烙印と言えば変だが
 流通業界がどこでも売れますと言えるのかどうか。
 売ってくれるのかどうか。
 買い控えるんじゃないの?っていう。」
(舟橋幸正さん)


15日、ついにワクチン接種の方針を決めた愛知県。
今後は風評被害を起こさないための対策が求められています。


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