※放送内容は毎週金曜更新します。
夜狐2024年07月29日(月)
夜狐の弥吉(江藤潤)は、路上で素人女の世話を持ち掛け、世話をした女から割前を取るという隠し売女の斡旋を稼業としていた。ある夜、弥吉は若侍が殺されるところを目撃。翌日、死体を発見したのは遊郭から朝帰りした同心・木村忠吾(尾美としのり)だった。平蔵(中村吉右衛門)らがその身元を洗うと、三千石の大身旗本・近藤監物(根上淳)の跡取り息子・小一郎(竹内隆治)であることが判明。不自然な殺され方から、平蔵は、近藤宅に密偵・伊三次(三浦浩一)を下働きとして潜り込ませた。一方、弥吉は殺しの下手人を突きとめ、近藤家の家督相続に絡む陰謀を探り出していた。裏で殺しの糸を引いていたのは、家督を実の息子・又太郎(久保龍一)に継がせたいと考えていた後妻の満寿子(佐野アツ子)だったのだ。弥吉は、井坂孫兵衛(沢竜二)と組んで、満寿子らをゆすろうと脅迫状を送り付けた。伊三次の働きによって、弥吉らの企みを知った平蔵は…。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、尾美としのり、三浦浩一、柴俊夫
【監督】小野田嘉幹
霧の朝2024年07月30日(火)
御用聞き、仙台堀の政七(谷口孝史)の手先として、お上の御用をつとめる桶屋の富蔵(平田満)は、妻のおろく(二木てるみ)、息子の幸太郎(高橋友洋)と仲睦まじく暮らしていた。そんなある日、幸太郎が紫頭巾の女にさらわれ、平蔵(中村吉右衛門)ら火付盗賊改方は、富蔵のためにも、と調べを進める。実は、幸太郎はもらい子で、生みの親は吉造(石丸謙二郎)とおきね(小鹿みき)といった。そのため幸太郎は、吉造夫婦にさらわれたと思われたが、真犯人は蜂須賀の為五郎の情婦・お安(東丘いずひ)だった。為五郎は富蔵に捕まったために死罪になっており、その復讐のために幸太郎をさらったのだ。そんな中、博打狂いがたたって夫婦で夜逃げしていた吉造は、偶然お安が幸太郎をかくまっていることを知る。幸太郎を助けるため、ひとり乗り込んでいく吉造。だが、蜂須賀一味に捕まってしまう。そのころ、平蔵もお安の行方をつかもうとしていた。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、平田満、二木てるみ、夏八木勲
【監督】高瀬昌弘
白と黒2024年07月31日(水)
平蔵(中村吉右衛門)は自ら出役し、門原の重兵衛(諸木淳郎)の隠れ家を急襲。一味をお縄にした。だが、その中でただひとり、平蔵が左腕を斬りながら逃がしたのが、もんどりの亀太郎(ベンガル)だった。軽業師のような身のこなしで脱出してのけたのだ。ある日、左腕が利かなくなった亀太郎に、お今(あべ静江)とお紋(浜田朱里)というふたりの女が声をかけてきた。お今は、かつて重兵衛の配下であり、亀太郎とは昔馴染みだった。その後、お今とお紋は、それぞれ女中奉公した先で盗みを繰り返し、亀太郎の世話を続けた。実はこのふたりは血のつながった姉妹で、亀太郎が隠している金を狙っていたのだ。それは、重兵衛が残した千両という大金だった。なかなか尻尾をつかませない亀太郎だったが、いつしかお紋に惚れてしまい、駆け落ちしようと持ち掛ける。そのころ平蔵は、女ふたり組の下女泥棒と、亀太郎の行方をそれぞれに追っていた。やがて、ふたつの線は交わっていった。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、尾美としのり、蟹江敬三、梶芽衣子
【監督】太田昭和
春の淡雪2024年08月01日(木)
火付盗賊改方同心・大島勇五郎(中村浩太郎)は、与力・天野甚造(御木本伸介)に率いられ向かった捕物で刀を飛ばされ不格好によろめいた。だが、その身を恥じることもなく、危ういところを助けられた礼はいくら払うのが世間の相場か、などと聞くような男だった。また、雪崩の清松(平泉成)を、その前身さえ知らぬまま密偵として使っていた。さすがの平蔵(中村吉右衛門)も、そんな大島の行く末を案じていた。ある日、平蔵の密偵・大滝の五郎蔵(綿引勝彦)が、清松と盗っ人の銀太郎(椎谷建治)が連れだっているところを見かける。報告を受けた平蔵は、大島と銀太郎に見張りをつけさせた。大島は、清松に博打で百二十両の借金があり、それをネタに仲間に引き込まれそうになっていた。銀太郎は、盗賊・池田屋五平(中村又五郎)の配下でありながら、清松と手を組み、五平から千両もの金を奪おうと企てていた。清松と銀太郎は、五平の娘・お梅(鶴山小夕里)を誘拐し、身代金千両を要求する。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、梶芽衣子、綿引勝彦、柴俊夫
【監督】杉村六郎
下段の剣2024年08月02日(金)
平蔵(中村吉右衛門)の一人息子、辰蔵(長尾豪二郎)が剣術の稽古を積んでいる市ヶ谷・左内坂の坪井道場に、ひとりの浪人(江原真二郎)がやってきた。浪人は、松田十五郎と名乗り、その太刀さばきと下段に構える独特の剣法に、辰蔵だけではなく見た者すべてが度肝を抜かれたという。話を聞いた平蔵は、その浪人がかつて江戸一番とうたわれた盗人の用心棒・松岡重兵衛ではないかと考える。松岡は、その昔、平蔵の剣の師匠・高杉銀平道場の客分でもあり、平蔵が若かりしころ、金欲しさに盗みを働こうとした折には、自分のようになるな、と身を持って止めてくれたことがあった。はたして、その浪人は、松岡重兵衛だった。今は引退した重兵衛は、盗賊・牛久の小助(井上昭文)と不破の惣七(宮内洋)から、再び用心棒を依頼されていた。重兵衛の行方を追う平蔵は、小助と惣七の狙いが絹問屋「山城屋」であることをつきとめる。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、高橋悦史、尾美としのり、三浦浩一
【監督】小野田嘉幹
本門寺暮雪2024年07月22日(月)
平蔵(中村吉右衛門)の昔の道場仲間である井関録之助(夏八木勲)は、雨の降りしきる中、絵馬堂の縁の下で、名幡の利兵衛(草薙幸二郎)と浪人(菅田俊)が話しているのを聞いてしまう。浪人に気づかれ、間一髪で難を逃れたものの、録之助はそのふたりと因縁があった。上方で暮らしていたころ、録之助は、悪の元締・大親分の利兵衛から殺しの依頼を受けたことがあったのだ。金に目がくらみ前金を受け取ってしまったが、翌日には思い直し断っていた。だが、のちに刺客を送られ、それが雨の日に見た浪人だった。録之助が『凄い奴』と呼ぶその浪人は、並の強さではない剣の腕前だった。凄い奴は、一目で録之助のことを思い出していた。録之助は凄い奴のあとをつけるが、まかれてしまい、逆に尾行されてしまう。その最中、録之助は平蔵と再会。事情を聞いた平蔵は、凄い奴と、これまで一度も尻尾をつかまれたことがないという利兵衛を捕えようと、この機会を利用する。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、尾美としのり、綿引勝彦、草薙幸二郎
【監督】高瀬昌弘
女賊2024年07月23日(火)
江戸の町に、東海道・岡部の宿から元盗賊・瀬音の小兵衛(花沢徳衛)がやってきた。偶然、密偵のおまさ(梶芽衣子)と再会した小兵衛は、助けを求めてくる。訳あって里子に出していた息子の幸太郎(黒田隆哉)が、盗賊の女首領・猿塚のお千代(沢たまき)に骨抜きにされているというのだ。お千代は、四十過ぎには見えない美貌と色気で数々の男を手玉に取り、屈強の手下を従え、殺しもいとわぬ急ぎばたらきをしていた。おまさから報告を受けた平蔵(中村吉右衛門)は、お千代の狙いが、幸太郎の働く乾物問屋「大坂屋」にあると踏んだ。お千代は、大坂屋の内情を探るために幸太郎を利用していたのだ。平蔵は、おまさを奉公人として大坂屋へ送り込んだ。また、小兵衛が幸太郎を助けるために、お千代を殺そうとしているのではないかと考え、直接会いに向かった。平蔵は、小兵衛に、岡部に帰って息子を待つように、すべてを自分に任せるようにと説得するのだった。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、蟹江敬三、香川照之、梶芽衣子
【監督】高瀬昌弘
四度目の女房2024年07月24日(水)
腕が良く評判の大工・伊之松(西岡徳馬)には、美人でよくできた女房のおふさ(森口瑤子)がいた。ふたりは誰もがうらやむ仲のいい夫婦だった。だが、伊之松の正体は、盗賊・利三郎(中田浩二)の配下であった。ある夜、塗り物問屋「橘屋」に賊が押し入り三千八百両が盗まれた。賊がどうやって入ったのか、相当な重量の金をどう持ち出したのかも不明。火付盗賊改方の筆頭与力・佐嶋忠介(高橋悦史)らの調べにより、倉の正面に滑車のような物が取り付けられていたことが判明する。そこから倉の改築時に図面を引いた伊之松の名前が浮かび上がった。だが、伊之松は失踪してしまう。実は、新たな盗みのために尾張へと向かっていたのだ。平蔵(中村吉右衛門)は、同心・木村忠吾(尾美としのり)におふさを見張らせ、伊之松の帰りを待つことにする。一年後、おふさは、生活のためとはいえ、その器量の良さを買われて通い小町になっていた。そんなおふさを、伊之松の盗賊仲間・仁吉(花上晃)が狙っていた…。
【出演】中村吉右衛門、高橋悦史、尾美としのり、江戸家猫八、三浦浩一
【監督】小野田嘉幹
雨乞い庄右衛門2024年07月25日(木)
平蔵(中村吉右衛門)の旧友・岸井左馬之助(江守徹)は、江戸に戻る旅の途中で、ひとりの老人(田村高廣)と知り合った。のらりくらりと素性を明かさず、時折見せる鮮やかな身のこなしは只者ではなかった。その男こそ、大盗・雨乞い庄右衛門。寸分隙のない仕掛けで大枚をせしめた盗みから四年…その消息は途絶えていた。長らく病の床にあったのだが復調したため、最後のおつとめに江戸へ向かう途中だったのだ。だが、かつての一味は庄右衛門の女・お照(朝比奈順子)と破目の伊太郎(富川澈夫)が共謀し牛耳っていた。庄右衛門の右腕である鷺田の半兵衛(藤沢薫)と安五郎(久賀大雅)を殺し、庄右衛門の命をも狙っていたのだ。伊太郎が放った定七(石山雄大)と市之助(小野進也)からの襲撃をなんとか逃れた庄右衛門は、事態を把握。けじめをつけるために、死期が迫る体をおして江戸へ向かった。左馬之助は、平蔵のところに駆け込み、事情を説明する。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、江守徹、田村高廣
【監督】高瀬昌弘
密告2024年07月26日(金)
ある夜、平蔵(中村吉右衛門)の役宅に、女(光本幸子)から一通の密書が届いた。差出人の名はなく、女は左足を引きずっていたという。手紙は、深川の足袋股引問屋「鎌倉屋」に、今夜盗っ人が押し入るとのことだった。半信半疑ながらも、同心を引き連れ出向いた平蔵は、そこで盗賊・伏屋の紋蔵(沖田浩之)一味を捕まえた。若い者ばかりで凶行に及び、急ぎばたらきを繰り返していた凶賊であった。紋蔵の顔を見た平蔵は、かつての遊び仲間の横山小平太(沖田浩之/二役)に瓜ふたつであることに驚く。小平太は、昔、平蔵が妹のようにかわいがっていた茶店の娘・お百に手を付け、身ごもったというお百を石段から突き落としたのだ。紋蔵は、そのお百の子供だった。やがて、紋蔵らを密告した女がお百であることがわかる。なぜ、母親が自らの子を密告したのか。平蔵は、その居所をつかむため、紋蔵に、自分が紋蔵の父親だと偽の告白をする。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、梶芽衣子、三浦浩一、尾美としのり
【監督】大洲齊
五年目の客2024年07月16日(火)
品川宿の遊女・喜蝶(波乃久里子)は、ある日、上機嫌の客から突然五十両もの大金を渡され、それを預かることに。男は、遠州の大盗賊・羽佐間の文蔵(笹吾朗)の手下、江口の音吉(中山仁)だった。そこへ岡っ引きと町方役人が現れ、音吉は逃走。残された五十両を持って、喜蝶は姿を消した。それから五年、喜蝶はお吉と名前を変え、神田の旅籠「丹波屋」の女将におさまっていた。そんなある日、偶然、音吉が丹波屋に客としてやってきた。驚愕するお吉。お吉はてっきり脅されるものと思い込み、好色な音吉に言われるがままに身体を任せてしまう。だが、音吉の方は、お吉が五年前のあの喜蝶であることに気づいていなかった。音吉の真の狙いは、丹波屋に押し入るための下調べだったのだ。そのころ、平蔵(中村吉右衛門)のもとにも、音吉が江戸に現れたとの報が入ってきていた。文蔵一味が動き出しているとみた平蔵は、音吉に見張りをつけさせる。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、高橋悦史、蟹江敬三、波乃久里子
【監督】杉村六郎
雨引の文五郎2024年07月17日(水)
ある日、平蔵(中村吉右衛門)は、雨引の文五郎(目黒祐樹)の所在をつかんだ。文五郎は一匹狼の盗賊で、決して非道を犯さぬ鮮やかな手口から『すきま風』の異名をとっていた。どうやら文五郎は、血生臭い盗賊一味と争っているらしい。平蔵は、両者ともに捕えようと文五郎を泳がせる。平蔵が文五郎のあとをつけていると、ふたりの男が文五郎に襲い掛かってきた。ひとりを捕えた平蔵だが、男は名前さえ明かそうとしない。その目に文五郎へのただならぬ殺意を感じた平蔵は一計を案じる。元盗賊の老密偵・五丁の勘兵衛(浜村純)を呼び寄せ、盗賊仲間を装い男を脱獄させたのだ。男は、伊勢の盗賊・落針の彦蔵(樋浦勉)だった。彦蔵は、仲間内でもつまはじきにされるほどの乱暴者だが、文五郎には大坂、江戸で盗みの邪魔をされ、さらには文五郎の横やりで縄張りを継ぎ損ねていたのだった。復讐を果たそうと、彦蔵一味は文五郎の居場所を突きとめ、追い詰める。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、高橋悦史、尾美としのり、綿引勝彦
【監督】高瀬昌弘
猫じゃらしの女2024年07月18日(木)
密偵の伊三次(三浦浩一)は、提灯店と呼ばれる岡場所の女・およね(池波志乃)の馴染みだった。ある日、伊三次はそこで卯之吉(三ツ木清隆)の姿を見かけた。卯之吉は、ろう型を取らせたら江戸でも三本の指に入ろうかという男で、それとは知らずに盗人の鍵を作って以来、誘いを断りきれずその道にはまりこんだ気の弱い男であった。報告を聞いた平蔵(中村吉右衛門)は、伊三次に内偵を命じた。卯之吉は、盗賊・伊勢野の甚右衛門(玉川伊佐男)の依頼で、ろう型を作っていたが直前で気が変わり、渡すのを拒んでいた。そして、そのろう型を、およねに預けていたのだった。甚右衛門一味は卯之吉を拷問し、型をおよねに預けたことを白状させた。一味の彦造(津村鷹志)が型を受け取りに行くが、それはすでに伊三次によってすりかえられていた。そのころ、密偵・小房の粂八(蟹江敬三)も、拷問されていた卯之吉をなんとか助け出していた。屈辱に震える甚右衛門は…。
【出演】中村吉右衛門、尾美としのり、三浦浩一、蟹江敬三、池波志乃
【監督】冨永卓二
盗賊二筋道2024年07月19日(金)
ある日、平蔵(中村吉右衛門)と密偵・彦十(江戸家猫八)は、高萩の捨五郎(菅原謙次)を見かけた。その信条から江戸へは顔を見せないといわれている名の知れた盗賊である。捨五郎は、侍に斬られようとしていた農夫の子供を助けようとして足を斬られ、危ないところを平蔵らに救われた。そんな捨五郎は、彦十に篭滝の太次郎(石橋雅史)へ手紙を届けてほしいと頼む。太次郎は北陸道から越中・越後にかけて荒っぽい盗みをはたらく盗賊だった。盗みの口を斡旋する、口合人・寺尾の治兵衛(西山嘉孝)のたっての頼みで、捨五郎は本意ではない太次郎一味の盗みに手を貸すことになっていたのだ。彦十が届けた手紙を読んだ太次郎は、足の傷で盗みができなくなったとの文面に、袖にされたと勘違い。恨みを抱き、捨五郎と治兵衛の殺害を企てる。そのころ平蔵は、捨五郎を火付盗賊改方役宅に連れて帰っていた。一方、治兵衛は嫁入りする娘のために一世一代の盗みを計画していた。
【出演】中村吉右衛門、高橋悦史、江戸家猫八、綿引勝彦、梶芽衣子
【監督】高瀬昌弘
引き込み女2024年07月08日(月)
磯部の万吉(金子研三)が江戸に戻ってきた。ひとりばたらきの盗賊で、確かな腕を買われて今も諸方の盗賊から助っ人を頼まれていた。ある日、万吉の行方を追っていた密偵のおまさ(梶芽衣子)は、かつて妹のようにかわいがっていたお元(高沢順子)と再会する。ふたりは昔、乙畑の源八の配下として引き込みをつとめていた。おまさがあとをつけると、お元は袋物問屋「菱屋」に入っていった。もしや万吉と盗みばたらきをするため引き込みに入っているのでは、と感じたおまさは、平蔵(中村吉右衛門)に報告。平蔵は、すぐさま菱屋に見張り所を設けさせた。一方、おまさは、物思いに沈んでいたお元のことが気になっていた。実は、菱屋の主人・佐兵衛(下塚諒)と男女の仲になっており、かけおちを迫られていたのだ。そんな折、平蔵のもとに大盗・駒止の喜太郎(林彰太郎)一味が現れたとの報が入った。平蔵は、喜太郎と万吉、そしてお元がつながっているのではないかと考える。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、篠田三郎、香川照之、藤巻潤
【監督】太田昭和
おみね徳次郎2024年07月09日(火)
髪結いの徳次郎(峰竜太)は、料理茶屋「万屋」の女中・おみね(宮下順子)と暮らしていた。徳次郎は、平蔵(中村吉右衛門)のことを親の仇と恨む盗賊・西浜の甚右衛門の配下で、引き込みと錠前外しの役目を担うという別の顔を持っていた。ある日、一味のひとり、佐倉の吉兵衛(中井啓輔)が徳次郎を訪ね、至急大坂へ向かうよう甚右衛門の指示を伝えるが、それをおみねに知られてしまう。どこまでもついて行くというおみねに、徳次郎は大阪に連れて行くことを決意する。ちょうどそのころ、密偵のおまさ(梶芽衣子)は、旧知の仲であるおみねと再会していた。おみねは、徳次郎とのことをすべておまさに打ち明けた。実は、おみねも盗賊・法楽寺の直右衛門(小松方正)の一味だったのだ。盗人同士の色恋はご法度、そのことを知りながら、おみねは徳次郎のことを本気で思っていた。事情を聞いたおまさは、ふたりの成り行きを平蔵の手に委ねるのであった。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、高橋悦史、尾美としのり、蟹江敬三
【監督】太田昭和
むかしの女2024年07月10日(水)
江戸の町に『雷神党』と名乗る浪人集団が出没していた。井原惣市(田中浩)が率いており、人は殺める、喧嘩は売る、押し借りゆすりと、野良犬のような所業を繰り返していた。そんな中、平蔵(中村吉右衛門)は市中見回りに出かけた折、偶然おろく(山田五十鈴)と出会った。おろくは、若き平蔵が放蕩生活を送っていたころ、世話になった女である。酒好きがたたって身を落としていたおろくに、平蔵は懐の財布を取り出し渡してやった。その場にいたおろくの仲間・おもん(浅利香津代)は味を占め、おろくにかつての客を訪ねて金をせびるようそそのかした。ふたりは、木綿問屋「大丸屋」の主人となっていた万吉(近藤洋介)から、まんまと十両をせしめる。そのからくりを知った雷神党一味は、おろくの名前を語って、さらに大丸屋を恐喝。目に余る悪行を重ねる一味に業を煮やした平蔵は、浪人どもを一網打尽にするため、おろくを説得し、雷神党一味の動静を探らせる。
【出演】中村吉右衛門、三浦浩一、江戸家猫八、柴俊夫、浅利香津代
【監督】小野田嘉幹
白い粉2024年07月11日(木)
「五鉄」の三次郎(藤巻潤)の口利きで、火付盗賊改方役宅で板前として腕を振るっている勘助(左とん平)。無類の博打好きだったが、恋女房のおたみ(甲斐智枝美)に出会ったことで博打の世界からは、きっぱりと足を洗っていた。平蔵(中村吉右衛門)は、そんな勘助の料理を毎日楽しみにしていた。だが、勘助の前に、昔の遊び仲間・六蔵(三上真一郎)が現れる。六蔵は、言葉巧みに勘助を博打に誘った。勘助は、再びずるずるとその深みにはまり、ついには借金の山を作ってしまう。実は、六蔵は盗賊・霰の小助(勝部演之)の配下であり、勘助は、小助たちの罠にはめられたのだった。小助一味の本当の狙いは、平蔵を毒殺することにあった。小助一味は、おたみを誘拐し、借金とおたみの命をネタに勘助を脅迫してきた。おたみの命を救うため、勘助は平蔵の吸い物に毒を入れることを承諾する。一方、平蔵は、そんな勘助の異変を敏感に感じ取っていた。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、高橋悦史、尾美としのり、藤巻潤
【監督】小野田嘉幹
托鉢無宿2024年07月12日(金)
品川でのこと、平蔵(中村吉右衛門)は、ぼろぼろの法衣をまとった異様な風体の托鉢僧に出会った。その男は、かつて同門で修行をしていた剣友・井関録之助(夏八木勲)だった。録之助と会うのは、かれこれ二十年ぶりのこと。昔から腕は立つが、どこか気楽な男で、物乞い同然の身なりではあったが、それも録之助らしいと平蔵は感じていた。ある日、録之助は、ねぐらにしている神社で、盗賊らしき男たちが密談をしているところに居合わせる。それは、盗賊・古河の富五郎(五味龍太郎)一味の、鍋蔵(江藤漢)と惣助(うえだ峻)だった。話を聞かれたと思った鍋蔵と惣助は、録之助の命を狙うがうまくいかず、ついには刺客を雇う。差し向けられた殺し屋は、録之助がかつて弟のようにかわいがっていた菅野伊介(深水三章)だった。伊介は、相手が録之助とは知らなかったのだ。苦労の末、殺し屋に身を落としていた伊介に同情した録之助は、平蔵のもとへ向かった。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、蟹江敬三、柴俊夫、深水三章
【監督】大洲齊
むかしの男2024年07月01日(月)
平蔵(中村吉右衛門)は、幕府の命により甲州・韮崎に出張していた。甲斐、信濃の二州に渡って猛威をふるっていた凶賊、犬目の伝次郎(藤原真)の逮捕がその目的だった。そんなある日、平蔵の留守を守る妻・久栄(多岐川裕美)のもとに一通の手紙が届いた。差出人の名は、近藤唯四郎(鹿内孝)。かつて久栄を口説き、捨てた男であった。平蔵と同じ、本所の旗本の出でありながら、人を殺めるなどして身を持ち崩し、今では盗賊の用心棒に成り下がっていた。近藤の狙いは、久栄の過去をネタに、捕えられた盗賊のひとり、砂吉(きくち英一)を釈放することだった。久栄は、毅然として要求をはねつけた。だが、近藤は盗賊の一味らとともに、久栄の姪・妙(三宅香菜)と、女中・しの(松島ゆみこ)を誘拐。期限までに久栄ひとりで砂吉を連れてこなければ、ふたりの命はないと脅迫してきた。意を決した久栄は、火付盗賊改方の御用部屋に向かうのであった。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、篠田三郎、香川照之、鹿内孝
【監督】小野田嘉幹
山吹屋お勝2024年07月02日(火)
平蔵(中村吉右衛門)の従兄、巣鴨の長者・三沢仙右衛門(北村和夫)が年甲斐もなく、料理茶屋「山吹屋」の茶くみ女・お勝(風祭ゆき)に入れあげ、嫁にしたいと言い出した。お勝の人となりを知るため山吹屋に向かった平蔵は、その身のこなしにどこか不審なものを感じ、密偵・関宿の利八(森次晃嗣)に素性を探らせた。女の顔をひと目見て、利八は驚愕する。それは、かつて利八が愛した女・おしのだった。夜兎の角右衛門(五味龍太郎)の下で盗賊だったころ、利八とおしのは御法度と知りながら恋仲になり、利八は指をつめていたのだった。おしのは、今はお勝と名前を変え、極悪非道の盗賊・霧(なご)の七郎(菅貫太郎)一味の引き込み役となっており、仲間の政(森田順平)と愛し合っていた。それを知った利八は、お咎め覚悟で、おしのと政を残忍な霧の七郎のもとから逃がそうと、ひとり奔走する。利八は今も、おしののことを思っていた。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、尾美としのり、香川照之、風祭ゆき
【監督】小野田嘉幹
敵2024年07月03日(水)
平蔵(中村吉右衛門)の剣友・岸井左馬之助(江守徹)は、三国峠で五郎蔵(綿引勝彦)という男が襲われるところを見かけた。五郎蔵の兄弟分・五井の亀吉の息子、与吉(浜田隆広)が、五郎蔵を親の仇と思い込み襲ってきたのだ。もみ合ううちに与吉は転落、命を落としてしまった。亡骸を埋めてやる五郎蔵。その様子を見て、左馬之助は五郎蔵が盗賊なのではないかと、江戸まであとをつけた。話を聞いた平蔵が調べを進めると、男は名のある盗賊・大滝の五郎蔵だった。盗っ人気質がすたれ、稼業に嫌気がさして足を洗っていたのだが、病床に伏しているかつての配下・文助(草薙良一)と、遊女に身を沈めていた妻のお浪(浅見美那)を助けるため、再び盗みに手を染めようとしていた。そんな中、五郎蔵はかつての仲間・小妻の伝八(井上博一)が、親の仇は五郎蔵だと与吉に言っていたことを知る。内偵を進め、一味を一網打尽にするべく采配をふるっていた平蔵は、そうした事情を知り…。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、蟹江敬三、綿引勝彦、江守徹
【監督】原田雄一
金太郎そば2024年07月04日(木)
江戸っ子たちの間に、威勢のいい彫り物が流行りはじめたころのこと、まだ女の彫り物は珍しかった。「金太郎そば」の女主人・お竹(池波志乃)は、片肌脱いで自慢の彫り物を見せながら出前のそばを運び、そば職人・由松(潮哲也)の打つそばのうまさも相まって評判となっていた。そんな中、醤油酢問屋「横田屋」に盗賊が忍び込み、八十五両が盗まれた。主人の伊太郎(山内としお)は、気づかぬうちにもとどりを切られ、ざんばら頭になってしまった。そこには藁で作った玩具の馬が置かれていた。老盗・藁馬の重兵衛(織本順吉)の仕業だった。ある日、金太郎そばに出向いた平蔵(中村吉右衛門)と酒井祐助(篠田三郎)は、店内に同じ藁馬があることに気づく。店の者に聞くと、お竹が「木更津の旦那」と呼んでいる恩人からもらった物らしい。矢先、のれんの間から店の様子をのぞき込んでいる男がいた。横田屋の番頭・善助(灰地順)だった。平蔵は、善助を問いただす。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、篠田三郎、香川照之、池波志乃
【監督】高瀬昌弘
用心棒2024年07月05日(金)
三年越しで盗賊・馬越の仁兵衛(江角英明)の盗人宿をつきとめた平蔵(中村吉右衛門)は、筆頭与力・佐嶋忠介(高橋悦史)らを向かわせるが、取り逃がしてしまう。張り込みをしていた木村忠吾(尾美としのり)が、とっさに連絡係に使ったそば屋の由三(亀井賢二)が、博打仲間を助けるため一味に漏らしてしまったのだ。江戸の治安は乱れ、裕福な商家は先を争って用心棒を抱えていた。ひげの浪人・高木軍兵衛(ジョニー大倉)は、深川の味噌問屋「佐野倉」の用心棒。今日も豪快にすごみ、ごろつきを追い払った。だが、この男、実は剣術が大の苦手。そのことを手代の文六(佐藤仁哉)に知られ、佐野倉の金蔵の鍵を持ち出すよう脅されてしまう。文六は、仁兵衛の部下で、引き込み役として佐野倉に入り込んでいた。奉公人のおたみ(森口瑤子)は、軍兵衛が鍵を渡すところを目撃してしまう。事情を知ったおたみは軍兵衛を説得し、すご腕の浪人・木村平九郎に助けを求めた。それは平蔵の忍びの姿だった。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、高橋悦史、尾美としのり、藤巻潤
【監督】高瀬昌弘
あきれた奴2024年06月24日(月)
岡村啓次郎(中村橋之助)は非番であったが、この日ばかりは同心全員が招集された。凶悪な日影の長右衛門一味を捕えるため、平蔵(中村吉右衛門)が万全を期してのことだった。大捕物は、いつになく苦戦を強いられるが、見事、捕縛。平蔵は岡村の無事を確認し、すぐに家に帰した。愛妻のみつが出産を控えていたのだ。だが、病弱のみつは出産に耐えることができず、岡村は母子ともに失ってしまう。以来、岡村は好きな酒を断ち、捕物ではいかなる危険をもかえりみず、率先して盗賊に向かっていくようになる。そんなある夜、岡村は身投げ寸前のおたか(長谷直美)とその娘を助けた。ふたりは、十日ほど前に捕えた二人組の盗賊のひとり、鹿留の又八(平泉成)の妻子だった。岡村は、妻子と会わせるかわりに逃げた相棒の居所を教えるよう持ち掛け、無断で又八を牢から連れ出すが、まんまと逃げられてしまう。だが、平蔵は、そこにひとつの賭けがあることを感じ取っていた。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、尾美としのり、藤巻潤、梶芽衣子
【監督】大洲齊
泥鰌の和助始末2024年06月25日(火)
日本橋の木綿問屋「角屋」の金蔵に『盗み細工』が見つかった。盗み細工とは、大工になりすました盗賊が、後日忍び込むために、普請の最中に抜け穴などの細工を施す仕掛けのことである。仕掛けは、盗人仲間に売りつけられることもあった。平蔵(中村吉右衛門)は、金蔵の普請に関わった者をすべて調べさせた。すると、ひとりだけ行方知れずの渡り大工がいた。盗み細工の名人、泥鰌の和助(財津一郎)である。平蔵は、角屋から目を離さぬよう酒井祐助(篠田三郎)に命じた。そんなある日、紙問屋「小津屋」の手代・磯太郎(山崎有右)が、主人である源兵衛(南条好輝)の罠にかけられ自殺する。磯太郎は、昔の仲間に預けた、和助の実の子だった。息子の死の真相を知った和助は、怒りに火がつき、かつて盗み細工を施した小津屋への盗みを計画する。平蔵は、妻・久栄(多岐川裕美)のふとした気づきから、和助と小津屋の関係をつかみ、その狙いを知るのだった。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、篠田三郎、尾美としのり、江戸家猫八
【監督】高瀬昌弘
盗法秘伝2024年06月26日(水)
平蔵(中村吉右衛門)は、叔母の法要のため遠州・浜松へ赴いた。帰りは、木村忠吾(尾美としのり)と別れ、気ままな一人旅をすることに。すると、行商風の男・善八(フランキー堺)が、平蔵に声をかけてきた。自らを木村平蔵と名乗り適当にあしらうのだが、善八はなかなか離れようとせず、行く先々についてくる。その日は、なんとか善八をまいて見附の宿に泊まった。夜半、ふと気配に気づき目を覚ました平蔵は、向かいの宿から、善八が黒装束で身軽に屋根から飛び下りていくのを目撃。翌朝、近くで泥棒があったと騒ぎになっていた。善八は自らが、ひとりばたらきの盗賊であることを明かし、平蔵のことを見込んで、盗みを手伝ってほしいと言い出した。町を仕切っている悪党の酒問屋「升屋」に忍び込む手はずだという。善八によると、平蔵の人柄は盗っ人にぴったりとのこと。善八の指南を受けながら、言われるままに升屋に忍び込み、ふたりはまんまと金箱ひとつを盗み出した。
【出演】中村吉右衛門、尾美としのり、フランキー堺
【監督】杉村六郎
女掏摸お富2024年06月27日(木)
平蔵(中村吉右衛門)は、密偵・相模の彦十(江戸家猫八)とともに、久しぶりに母の実家である巣鴨の豪農・三沢仙右衛門(北村和夫)の家を訪ねた。のっぺい汁を堪能し、仙右衛門と王子権現に参詣しようと向かっているところで、あごにほくろのある女(坂口良子)とすれ違った。仙右衛門は、あれは笠屋の女房・お富だが、ほくろはないはずだと言う。彦十から、あごにほくろのある女スリのことを聞いたことを思い出した平蔵は、翌日、お富を尾行する。すると、見事な早業で、続けざまに三人から財布を抜き取ったのだ。平蔵は、お富から糸をたぐっていけば、意外な大物に当たるかもしれないと内偵を続けさせた。お富は、卯吉(中西良太)と所帯を持ち、幸せな日々を送っていた。だが、かつて江戸市中でもそれと知られたスリの元締、霞の定五郎(睦五朗)の娘だった。お富は、昔の仲間である岸根の七五三造(片桐竜次)から、百両用意しないとその素性をばらすと脅されていたのだった。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、尾美としのり、香川照之、江戸家猫八
【監督】高瀬昌弘
浅草・御厩河岸2024年06月28日(金)
平蔵(中村吉右衛門)は、甲州・石和に出張り、大盗・鶍(いすか)の喜左衛門(高並功)一味を捕えた。その際、腕を買われてはるばる江戸から招かれていた錠前外しの松吉(本田博太郎)もお縄を受ける。平蔵は、正直で孝行者の松吉を放免し、密偵とした。松吉は、浅草の御厩河岸で飾り職に打ち込むかたわら、同心・酒井祐助(篠田三郎)の忠実な手足となって働いた。また、お梶(浅利香津代)と所帯を持ち、平穏な日々を送っていた。そんなある日、松吉のもとに諸国を股にかけた大盗賊、海老坂の与兵衛(岩井半四郎)から、錠前破りの依頼がくる。与兵衛は、盗賊ながら仁義に厚く『盗む者も泣きを見ず、盗まれる者も泣きを見ず』が流儀の、その世界では一目置かれる男。そのことを知った病床の父、元盗っ人の卯三郎(田武謙三)は、やるべきだと松吉の背中を押す。平蔵と与兵衛の間で板挟みになる松吉。そのころ、すでに平蔵のもとにも与兵衛が江戸に現れたとの報せが入っていた。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、篠田三郎、浅利香津代、田武謙三
【監督】大洲齊
さむらい松五郎2024年06月17日(月)
平蔵(中村吉右衛門)の部下、山口平吉(板東八十助)がその男に出会ったのは、父母の墓参りの帰り、目黒不動門前の飴屋「桐屋」に立ち寄ったときである。桐屋の黒飴は平蔵夫人・久栄(多岐川裕美)の大好物、手土産に求めるためだった。山口に声をかけたのは、須坂の峰蔵(赤塚真人)。知らない顔だったが、山口が話を合わせていると、自分のことを七年前に湯屋谷の富右衛門のところで一緒に盗みをした網掛の松五郎(坂東八十助/二役)と間違えているようだった。どうやら山口は松五郎と瓜ふたつのようだ。松五郎は役者あがりでいつも侍の風体をしており、浪人や大名家の家臣になりすまして盗みを働くところから『さむらい松五郎』の異名がついていた。峰蔵は、ろくろ首の藤七(深江章喜)の手下だが、残忍なやり口に嫌気がさし、松五郎の下で働きたいと言い出した。平蔵にそのことを伝えた山口は、松五郎として芝居をし、ろくろ首一味を探るよう命じられる。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、篠田三郎、香川照之、三浦浩一
【監督】吉田啓一郎
兇賊2024年06月18日(火)
ひとりばたらきの老盗賊・鷺原の九平(米倉斉加年)は、四十年ぶりに故郷である加賀の国、金沢近くの田近谷村に帰ってきた。死ぬ前に一度だけ故郷を見たいという望郷の念にかられてのことだった。今は赤の他人が暮らしているかつての家で、水を一杯だけ馳走になり、かわらぬ村の景色を一目見て満足し、その日のうちに故郷をあとにした。江戸に戻る途中、加賀越中の国境、倶利伽羅峠で、九平は、ふたりの男が長谷川平蔵(中村吉右衛門)暗殺の密談をしているのを聞いてしまう。その男たちは、大盗賊・網切の甚五郎(青木義朗)と、その片腕・文挾の友吉(江幡高志)だった。江戸に戻った九平は、表の商売である居酒屋「加賀や」の店主として店に出る。そこへ、店の芋酒の評判を聞きつけ、着流し姿の平蔵が訪れた。九平は、平蔵の温かな人柄にすっかり惚れ込んでしまった。その後、平蔵の素性を知った九平は、偶然、友吉の姿を見かける。九平は甚五郎一味の隠れ家を探り、見張ることに。平蔵暗殺の企ては目前に迫っていた。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、篠田三郎、梶芽衣子、青木義朗
【監督】小野田嘉幹
一本眉2024年06月19日(水)
茶問屋の亀屋久右衛門方が押込みに襲われた。主人の久右衛門以下が虐殺され、金蔵からは七百八十両が強奪された。金蔵の錠前は鉄製であったが、すぱっと見事に切断されていた。この手口に覚えのあった平蔵(中村吉右衛門)は、『一本眉』の異名を持つ清州の甚五郎(芦田伸介)に行き当たる。この鮮やかな錠前の扱いは、一本眉のやり方そのものだった。そのころ、密偵のおまさ(梶芽衣子)は偶然、甚五郎と再会していた。おまさは昔、甚五郎に仕えていたのだ。甚五郎は、おまさに次の盗みを手伝ってほしいと持ちかけた。話を持ち帰ったおまさは、平蔵に報告。そこで、亀屋の一件は、一本眉がやったものではないと進言した。一本眉は、急ぎばたらきを何よりも嫌う男であった。ことの真相は、甚五郎を裏切った元配下の佐喜蔵(藤岡重慶)の仕業だったのだ。浪人に変装した平蔵は、佐喜蔵に命を狙われた甚五郎を助ける。その正体が鬼平とは知らない甚五郎は、すっかり平蔵のことを気に入ってしまう。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、高橋悦史、篠田三郎、蟹江敬三
【監督】田中徳三
狐火2024年06月20日(木)
市ヶ谷・田町の薬種屋、山田屋孫兵衛方が襲われた。一家十七人が皆殺しにあった。叫び声をたてられぬように、まず、こん棒のようなもので頭を殴りつけ、気絶したところを刃物で刺すという卑劣なやり口だった。家の中に色刷りされた狐火札が貼りつけてあったことから、狐火の勇五郎(速水亮)の仕業と思われた。狐火の一味は、平蔵(中村吉右衛門)と密偵のおまさ(梶芽衣子)に縁があった。平蔵は、暴れ放題の若かりしころ、泥棒と正体を知りつつ先代と付き合いがあり、おまさは勇五郎と恋仲になりながら掟によって別れた過去があったのだ。ふたりが知る狐火の一味は、決して残虐なことはしない。内偵を続けるおまさは、ある日、元狐火一味、瀬戸川の源七(垂水悟郎)と出会う。そして、勇五郎と十年ぶりの再会を果たした。勇五郎が言うには、弟の文吉(伊藤高)が二代目狐火を語り、押し込みと殺しを続けているという。平蔵は、文吉に二度と狐火を名乗らぬよう説得しようとする勇五郎を泳がせる。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、尾美としのり、藤巻潤、江戸家猫八
【監督】小野田嘉幹
笹やのお熊2024年06月21日(金)
平蔵(中村吉右衛門)の役宅に、お熊(北林谷栄)という老女が訪ねてきた。お熊は、若き平蔵が無頼時代に世話になった女であった。話によれば、弥勒寺の下男、茂平(北原将光)から遺言を託されたという。茂平は昨晩、命を落としていた。その遺言というのは、ひとつは千住の畳屋、庄八(早川純一)に自分が死んだと伝えること、もうひとつが神奈川宿の塩売り牛松の家にいる、孫のおみつに金の入った胴巻きを届けることだった。胴巻きには五十八両もの金が入っていた。お熊は、わけありの大金とみて平蔵を訪ねたのであった。寺には、火災に備えて土地の人間や檀家が預けていた財産があった。平蔵は、その財産を狙い盗賊一味が暗躍しているのではないか、茂平はその引き込み役で、畳屋の庄八も一味なのではとの疑いを持つ。そこで、平蔵、沢田小平次(真田健一郎)、密偵・小房の粂八(蟹江敬三)が見張りにつく形で、まずは遺言通りに、お熊を庄八のもとに向かわせる。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、高橋悦史、篠田三郎、藤巻潤
【監督】吉田啓一郎
蛇の目2024年06月10日(月)
五十海の権平(山本弘)をはじめ、名うての盗っ人たちが平蔵(中村吉右衛門)の手にかかっていた。捕縛をまぬがれた盗賊たちは恐れおののき、江戸を去る者があとを絶たなかった。ある日、平蔵と木村忠吾(尾美としのり)は、そば屋でひとりの男に出会う。物腰は柔らかいが、平蔵をうかがうその目には鋭い憎悪が見てとれた。男の名は蛇(くちなわ)の平十郎(石橋蓮司)。名前の通りの執念深い男で、その手口は水際立っており、大口の盗みばたらきを続けていた。一年、二年とかけて盗みを企てている間、組む相手や手下にさえ顔を見せようとしない抜け目のない大盗っ人であった。平十郎が次に狙うのは、将軍家に取り入り御典医にまで成り上がった千賀道有(福中勢至郎)の屋敷。その金蔵から一万両を盗み、江戸で大仕事をやってのけることで、平蔵たちの顔に泥を塗る魂胆だった。平十郎の企みが自分への挑戦だと悟った平蔵は、慎重に調べを進めていく。
【出演】中村吉右衛門、篠田三郎、尾美としのり、多岐川裕美、柄本明
【監督】高瀬昌弘
血頭の丹兵衛2024年06月11日(火)
江戸の町に、殺りくと略奪を重ねる神出鬼没の盗賊が出没していた。それは、血頭の丹兵衛(日下武史)の一味と目された。だが、平蔵(中村吉右衛門)らは、なかなか丹兵衛の手がかりをつかめずにいた。そんなある日、伝馬町の牢屋につながれていた小房の粂八(蟹江敬三)という男が、丹兵衛のことで平蔵に面会を求めてくる。かつて粂八は、丹兵衛の手下だったのだ。粂八は、一連の凶行は偽の丹兵衛の仕業だと主張。丹兵衛の仕事には『人を殺さず、貧乏人は襲わず、女は犯さず』の掟があるといい、偽物を捕まえる手伝いをしたいと申し出てきた。平蔵は粂八を解き放ち、密偵として真犯人を探らせる。やがて、盗賊の一味が東海道の島田宿に集まるとの情報を得て、酒井祐助(篠田三郎)、沢田小平次(真田健一郎)、竹内孫四郎(中村吉三郎)、粂八らが向かった。そんな中、江戸の町に血頭の丹兵衛を名乗る者が現れ、誰も殺めず、いつ押し入ったかもわからない見事な盗みをやってのける。
【出演】中村吉右衛門、篠田三郎、高橋悦史、蟹江敬三、多岐川裕美
【監督】高瀬昌弘
血闘2024年06月12日(水)
平蔵(中村吉右衛門)の屋敷に、おまさ(梶芽衣子)という女が訪ねてきた。おまさは、若かりしころの平蔵が、まだ『本所の銕(てつ)』の名で通っていたころに馴染みだった居酒屋の娘で、酔いつぶれた平蔵に卵酒を作って出したりと、何かと面倒をみてくれたのであった。聞けば、今は札差「大月」で住み込みとして働いているという。だが、その実態は吉間の仁三郎(磯部勉)という盗賊の引き込み役であった。恩あってさからえずにここまで言うことを聞いてきたが、それは人ひとり傷つけない盗みだったからこそ。今回の仕事は、用心棒を迎えたため皆殺しにするという。その凶悪さに足を洗う決意をしたおまさは、すべてを平蔵に話した。その日から、おまさは平蔵の密偵として働くことになった。早速、大月に戻ったおまさは、仁三郎から盗みの決行日を聞き出そうとするのだが、その行動がかえって怪しまれ、火付盗賊改方の密偵であることがばれてしまうのだった。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、高橋悦史、篠田三郎、尾美としのり
【監督】田中徳三
むっつり十蔵2024年06月13日(木)
紙問屋の「大和屋」が襲われ、主人の勘兵衛夫妻をはじめ奉公人が皆殺しにされた。当時、その手口の残虐さで江戸の市民を震えあがらせていた怪盗に、掛川の太平(浜田晃)と呼ばれる男を首魁とする一団がいた。平蔵(中村吉右衛門)は、大和屋の現場を一目見て太平一味の仕業に違いないと判断。現場の手がかりから、賊のひとりと思われる助次郎(河野実)という男が浮かぶ。平蔵は助次郎のことを、部下の小野十蔵(柄本明)に探らせた。十蔵は、正直者ではあるのだが、仲間内で『むっつり十蔵』とあだ名されるほど、目立たず風采のあがらない男。出世街道とは縁がなく、いつも緊張で震えていた。助次郎の家に向かった十蔵は、そこで身重の妻・おふじ(竹井みどり)が、別れを切り出した助次郎を絞殺するところを目撃する。おふじの身の上に同情した十蔵は、おふじをかくまってしまうのだった。不器用な十蔵に手柄を立てさせてやろうと考えていた平蔵は、情けが仇にならなければよいのだが、と心配する。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、尾美としのり、三浦浩一、篠田三郎
【監督】富永卓二
明神の次郎吉2024年06月14日(金)
明神の次郎吉(ガッツ石松)は、関東から奥州にかけて名の通った大盗賊、櫛山の武兵衛(土屋嘉男)の右腕であった。盗っ人でありながら、人が良くつい善行にも手を貸してしまう風変わりで、妙に愛嬌のある男だった。次郎吉は、武兵衛から呼び出しを受け、骨休みをしていた故郷の下の諏訪から江戸へ向かっていた。道中、病に倒れた旅僧の遺言を受け、形見の短刀を江戸のある武士に届けてやることに。その武士とは、平蔵(中村吉右衛門)の剣友、岸井左馬之助(江守 徹)だった。左馬之助は次郎吉をもてなそうと、本所の軍鶏鍋屋「五鉄」に招待する。五鉄は、親子二代にわたって平蔵と浅からぬ縁があり、主人の三次郎(藤巻 潤)も何度となく平蔵のために働いていた。そこで、密偵のおまさ(梶芽衣子)は次郎吉の姿を見かけた。実はその昔、おまさも武兵衛の配下だったのだ。次郎吉のあとをつけたおまさは、武兵衛一味が動き出そうとしていることをつかむ。
【出演】中村吉右衛門、多岐川裕美、尾美としのり、藤巻潤、三浦浩一
【監督】原田雄一
暗剣白梅香2024年06月06日(木)
天明八年、ときの老中筆頭・松平定信が“鬼平”こと長谷川平蔵(中村吉右衛門)の火付盗賊改方の長官を解任したのは、より重要な役職に登用するためであった。しかし、江戸の町は鬼平が解任されてから急激に凶悪化。中でも一連の辻斬りは、その非情さと斬り口のすさまじさで、江戸市民を震えあがらせていた。京極備前守(仲谷昇)の命により長官に復帰した平蔵は、ある夜、刺客に襲われる。獣のような殺気と鋭い太刀さばきから、江戸に出没する謎の辻斬りと同一犯であることを見抜く平蔵。だが、なぜ自分が狙われたのか。暗闇に消え去った刺客は、女を思わせる甘美な香りをまとっていた。平蔵はそのにおいを手がかりに身元を探り始める。やがて白梅香という、におい油を買う浪人・金子半四郎(近藤正臣)の存在をつきとめる。金子は十六歳のときに父を殺されており、その仇を探すために刺客となっていた。平蔵は、自らおとりとなって見回りに出かけ、金子をおびき出す作戦に出る。
【出演】中村吉右衛門、篠田三郎、尾美としのり、三浦浩一、高橋悦史
【監督】小野田嘉幹
本所・櫻屋敷2024年06月07日(金)
本所界隈へと市中見回りに出た平蔵(中村吉右衛門)は、旧友の岸井左馬之助(江守徹)、相模の彦十(江戸家猫八)と再会する。平蔵は彦十からの情報で、先日取り逃がした盗人・小川や梅吉(遠藤征慈)が、御家人・服部角之助(水澤心吾)の屋敷にいることを知った。梅吉の犯行は、金を強奪したうえに家人のすべてを惨殺し、ときには火をつけるという凶悪無残なものであった。その梅吉と悪事でつながっていたのは、今は服部の妻で、平蔵と左馬之助にとっては、かつて競い合うほどに憧れていた、おふさ(萬田久子)だった。左馬之助は、そんなおふさのことを今もあきらめきれず、妻も子も持たずにいた。平蔵は、梅吉の一味が服部と悪事を企てているとにらみ、一網打尽にするため見張りをつけさせ、さらに、おふさのことを調べ始める。おふさは、呉服問屋の「近江屋」に嫁いですぐに身ごもった子供を死産、ひと月もしないうちに今度は主人まで亡くしていたのだった。平蔵らは服部の屋敷に踏み込み、企みを暴く。
【出演】中村吉右衛門、篠田三郎、尾美としのり、江戸家猫八、三浦浩一
【監督】小野田嘉幹