名古屋市出身で、本作品の監督を務めた日比遊一さんの実話をもとに描かれた「名も無い日」。日比監督と、愛知県出身の女優、岡崎紗絵さんにインタビューさせていただきました。
――監督ご自身のプライベートな出来事がベースにあるということですが、なぜ、映画にしようと思ったんですか?
ニューヨークに住み、充実した生活を過ごしている時に突然、弟の悲報が入ったんです。
自分はキャリアや成功ばかり追いかけて好き放題に生きてきて、弟に全部背負わせてしまっていたんだなと気づいて、罪悪感に苛まれました。どうしようもない自分の思いを書き留めたり、弟に手紙を書いたり、そんなことをしているうちに、自分が今向き合っていることは、もっと根本的なことで、普遍的なことなんじゃないか思い始めたんです。
人間には一つの共通項がある。それは、この世に生まれてくること、そして死んでいくこと。人間の、永遠のテーマですよね。
そう思ったら、自分の走り書きだけじゃなくて、もう少し深く、形に出来ないかなと思ったのがきっかけです。
――名古屋市出身の岡崎さん、作品への出演が決まった時はどう思いましたか?
地元でお仕事するのは一つの夢でもあったので、夢が叶うと知ったときはすごくうれしかったです。
今回演じた役は、登場人物の中では若いんですが、落ち着きがあって達観している子。
まわりの大人たちを引っ張っていくような雰囲気を出せたらいいなと思って演じました。
――終始名古屋弁が印象的でしたが、監督のこだわりはあるんでしょうか?
『言葉』って、作品の中では、ある意味一種の音楽のようなもの。
だからすごく大事なものだなと思っていたんですけど。
ただのご当地映画にはしたくないな、というのは最初からありました。
普遍的なものが作品の根底にあって、言葉の響きがが味付けするような、そんなイメージで作っていました。
俳優の皆さん、本当に名古屋弁が自然で上手でしたよ。
――ちなみに、誰の名古屋弁が印象に残っていますか?
個人的には小田切くんの名古屋弁が好きでしたね。
あの柔らかいトーンが、僕の弟のことを知ってるのかと思うくらい、すごく似ていたんです。
――名古屋市が舞台となっていますが、お二人が印象に残っているロケ地は?
私は、熱田神宮ですね。
学生の頃にお祭りや初詣も行っていたので、すごく懐かしくなりました。
僕も熱田神宮かな。
子どものころ、熱田神宮や堀川は遊び場だったんです。
カブトムシやクワガタを捕まえていた思い出の木があるんですが、その木がそのままあったんですよ。当たり前のことですけど(笑)あー懐かしいなぁって、感動しました。
――最後に、東海地方の皆さんに一言お願いします。
大変な世の中で、命の尊さを実感している人も少なくはないと思います。
そうした中で、自分はなぜ生きているのか、生かされているのかっていうのを問いかけてくれる映画だと思います。
祭りや花火大会などが中止になっている中、映画を通して祭りの力っていうのも体感してほしいなと思います。
コロナ禍というのもあり、この時期に公開するのはすごく意味があることだなと思います。
温かい気持ちにさせてくれる映画だと思いますので、心のどこかに大切な人を思い浮かべながら見ていただきたいです。
映画「名も無い日」は全国公開中です。