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2018.07

映画「未来のミライ」インタビュー前編

細田守監督の最新作、映画「未来のミライ」。

甘えん坊の4歳の男児くんちゃんと、

未来からやってきた成長した妹ミライちゃんの2人が繰り広げる不思議な冒険を通して、

さまざまな家族の愛のかたちを描いている物語です。

先日、くんちゃんの声を担当した上白石萌歌さんと細田監督にお話を伺いました。


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宇野

作品をご覧になった感想は?

上白石さん

初めて観たのがカンヌの上映でした。

自分が出ているのを忘れる程引き込まれて、

くんちゃんと同じように自分の身長も1㎝伸びたような、そんな感覚になる、

自分も成長しているような気持になれる、勇気を貰える映画でした。

細田監督

3年間かけてやっとできて、皆さんに観て頂けるようにまでになったので、

そういう期間のことを考えれば本当によかったなあと。

すごく良い映画になったのもスタッフキャストの方々の力だと思うので、

本当に感謝したいと思います。

宇野
くんちゃんをどんな人に演じてもらうか迷っていたと伺ったんですが、

上白石さんのくんちゃんはいかがでしたか?


細田監督

オーディションを重ねながら誰がくんちゃんになるんだろうって。

時間をかけながらオーディションしてたんですけど、

その中で萌歌ちゃんが現れたときに演じてくれて「わ!いた!!」ってね。

僕はくんちゃんの声を18歳の女性が演じると思っていなくて、

もっと小さい子か大人の女性が演じると勝手に思っていたので、

本当にそれもびっくりしたし、

萌歌ちゃんの人間性っていうか表現力が

この映画に求めるくんちゃんにすごくぴったりきたのが嬉しかったですね、本当に。


宇野

良い意味で裏切られた?


細田監督

そうなんです。

だからもうこの人だって思ったあと、帰りの車の中で

「あ、この映画ってこういう映画なんだ」って。

主役っていうか主演を務めるのが18歳の美少女だけど、

そういう風な映画になるっていうのを初めて知って、

3年間作っていたくせに初めてこの作品の本質がわかったような感じでした。


宇野

それを聞いていかがですか?


上白石さん

いや、なんか、私も実は監督の作品の大ファンで、

毎回最新作が発表されるごとに劇場に足を運んでいて、

今回の作品も去年の冬に情報が公開になって、

わ、こんなまた面白そうなものやるんだ、

絶対観に行こうって思っていた身なので、

またこうやってお会いできるのが夢のようですし、

実は6年前に1度「おおかみこどもの雨と雪」のオーディションにも行かせて頂いて、

また今回こうやってお会いできることが不思議ですね。


宇野

そこから役作りはどんな風になさいましたか?


上白石さん

まず4歳の男の子っていうのが自分の中でぼんやりしていたので、

自分の足で保育園に足を運びました。

4歳の男の子と遊んだり、おしゃべりしたり、実際に触れ合うことで、

こんな話し方するんだ、とかこんな表情とか動き方するんだって、

自分の目で確かめられたことが

お芝居をする上で1番のヒントになったので、自分でそういう研究を重ねました。


宇野

そうやって役作りをして臨んだアフレコ、

声優陣が横並びになってアフレコをするのと、

おひとりおひとり録るスタイルとあると思うんですが。


細田監督

聞くところによると、

今劇場アニメは1人1人録るのが主流になってきているみたいで。

でも僕は1回もやったことがないんですよ。

っていうのはやっぱり一緒に演じているその空気っていうのまで、

何かこう録音されちゃうっていうのかな、音の成分に含まれていて、

ある役者さんがこういう風に演じたから萌歌ちゃんはこういう風に演じようとか、

萌歌ちゃんがこういう風に演じたから例えば星野さんはこういう風に芝居が変わって、とか。

何かそういう風にね、その場の相乗効果的な表現ってものすごい沢山あるので。

やっぱりね、別々だとないじゃないですか。

演じても先に録った人が変わらない、みたいなことになっちゃうと、

空気が生まれないんですよね。

それをすごく大事にしたいなあっていうことがあって、

一緒に録るようにしていますね。


宇野

現場の空気感というのは?


上白石さん

私もてっきり1人で録ってあとから繋ぎ合わせるものだと思っていたのすが、

同じブースの中で皆さんと一緒にお芝居を作っていくのは、

実際にコミュニケーションも生まれるし、

何かもうブースの中がおうち、みたいな感じでその場の空気感とか、

生の生活感みたいなものが映画の中にも生まれたんじゃないかなって思います。


宇野

アドバイスや声掛けなどはありましたか?


上白石さん

ずっと尊敬していた俳優の方々ばかりだったので、

ずっと勉強というか、何かを先輩方から吸収しようと。

例えば、自分が出演していないシーンでもブースの中に入らせて頂いたりだとか。


細田監督

あ、でもそうでしたよね。してましたね。やっぱりそれがすごいなあっていう。

普通はね、普通はっていうとあれだな(笑)

あの、シーンが終わるとね、次の自分のシーンに向けてね、

イメージを作っていくのにはけるものなんですけど、

でも萌歌ちゃんは結構空気っていうか流れっていうか

そういうものをつぶさに見てるっていうかね、

こう広いアフレコブースの椅子のはしっこで

邪魔にならないようにっていう配慮がありながらちゃんと見学しているっていうのが。

それってすごく大きいですよね。作品に臨む姿勢として、と思いますね。

この前ほら、はたなか君もしてたし、ほんださんもそうしたかもしれないね。


上白石さん

他の声優の皆さんも出演なさっているので。


細田監督

そういう方々もね、

結構自分の出番じゃなくても見ているっていうようなのはあったよね。

星野さんもそういう瞬間あったね。


上白石さん

そうですね、私のクランクアップの日に最後まで残って下さって。


細田監督

そうそう。


上白石さん

本当に素敵な方々ばかりだったので。


宇野

あそこがホーム、家状態で声を吹き込めたと。

後編に続く☆

宇野 名都美 @ 2018年7月 9日 12:07

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