メイキング・オブ『レスキューファイアー』VFX PART2
『レスキューファイアー』の特撮に肉迫するスペシャル編パート2。
今回は森田淳也さんのロングインタビューをお届けしよう。
──『レスキューファイアー』のCG作業で何か意識していることはありますか?
【森田】3歳から6歳くらいの子供たちがメインターゲットなので、表現方法としてはリアルだけど、その中に分かりやすい派手さやカッコ良さを入れることで、小さい子達に強くビークルやヒーローたちを印象づけようと考えてます。
──ビークルのデザインは玩具が先行なのですか
【森田】そうです。基本的なものはタカラトミーさんから頂いて、それを元にしつつ劇中用にアレンジを加えさせてもらってます。
──バンクシーンについて伺いたいのですが、コンテはあるのですか?
【森田】玩具に関わる重要なシーンなので、バンクのコンテは、僕や監督さんだけでなくタカラトミーさんも交えて作成してます。僕らとタカラトミーさんとで、用意してもらった玩具を使って「こことここが合体する瞬間をこのアングルで撮ります」というムービーを撮って、それを繋いで一通りの流れを作ってから、スタッフにそのガイドを見せつつ打ち合わせて、作業に入ります。
──合体バンクで意識していることはなんでしょうか?
【森田】玩具での再現性が重要なんです。合体バンクを観て、子供が玩具を変形させたり組み立てられたりできるように、合体する瞬間はそこを強調してちゃんとみせることを心がけてます。
──ファイナルレスキューは逆にイメージ先行なのですか?
【森田】本編で格好良く活躍するのをみて、子供たちに憧れてもらえないと意味がないですからね。そうしたギミックをこちらで考えたりもしてます。
──14話に出てきた、ファイアードラゴンのはしごをジャンプ台にするオリジナル技「カタパルトラダー」は驚きました
【森田】監督とCGの打ち合せをしているときに、「はしご部分をジャンプ台に使えるんじゃない?」「じゃあ、ジャンプさせちゃいましょうか」みたいな感じで(笑)。監督と僕が話し合ってるうちに出てきたアイデアですね。
──19話でのグレートワイバーンの噛み付き攻撃などは、かなり動物的だったのですが、通常のビークルと動物型では、動きに差別化のようなことをしているのですか?
【森田】「レスキュー」シリーズの世界観はリアルよりなので、動物型であっても、あくまでも基本は他のビークルと同じで“現実にあるもの”の延長で考えています。とはいっても、ビークルが合体してグレートワイバーンになったときに、メカっぽい動きよりも、やっぱり命が宿っていそうな動きをした方が、見た目はカッコイイだろうというところがあったので、噛み付きやバンクの最後の咆哮(ほうこう)するポーズなども生き物っぽくアレンジしました。ガイアレオンもかなりな生き物っぽさで活躍しますよ。
──エクスドラゴンやレスキューキングと、人型ロボットが登場しましたが、『フォース』のレスキューマックスのようにCGならではの激しいアクションをするのですか?
【森田】レスキューマックスの動きはロボットアニメ級で、後ろ回し蹴りとかしてましたからね(笑)。あれは『レスキューフォース』ですごく良かったことだと思っているので、今回も同じノリで、それにも増して動くようにしたいです。できるだけ制約無く動かしたいなと。
──そうしたCGならではのアクションというのは、意識しているのですか?
【森田】そこを持ち味にしてゆくのが、他とは違う、この番組の特色だと思っています。
──主にタマちゃんが絡むシーンが多いのですが、本編にギャグっぽいエフェクトが入りますね
【森田】やっぱり基本は監督さんのやりたい度合いにかかってきますね。タマちゃんのキラキラエフェクトは、アクション監督さんが言ってたんですよ。「タマちゃんを綺麗に(エフェクトで)包んであげたい」って(笑)。しかもタマちゃん(中村静香さん)本人からお願いさせるという手段もつかってきて(笑)。
──火炎魔人ができるまでの課程を教えてください。
【森田】火炎魔人も最初はデザインから作業に入る形になります。シナリオを読んで監督さんとこうした動きをさせたいというところからデザインを起してます。それをもとにシナリオ上での攻撃方法(口から火を吹くとか、剣から火炎放射するとかですね)から、どういう見せ方にするのかを、コンテ打ち合せの時に話し合ったり、こちらからアイデア出しをしたりして決めて、それに準じた攻撃方法の武器なども一緒に作っていきます。
──森田さんは、「超火災」というのをどう捉えてるのですか?
【森田】ロケ現場は実際には火を使えない場所が多いですから、VFXで火をつけて、あり得ないような火災感をだせるようにしてます。そういう「あり得ないような火災」(街中が火の海に呑まれているような)を鎮火しに来るのがレスキューファイアーなんじゃないかと思います。
──20話で本編監督をされていましたが、いかがでしたか?
【森田】20話は、VFXスーパーバイザーの仕事をいつも通りにこなしながらでの撮影だったので、その時間のやりくりが一番大変でしたね。普段と違って役者さんに演技を付けるのも、僕としては楽しかったです。
──森田さんは普段も撮影現場に出向いているのですか?
【森田】行ける限りは必ず現場に出ます。合成カットの立ち会いの他に、ビークル活躍シーンに使う実景の静止画をスチルカメラで撮ったりもします。
──すると、8月の名古屋ロケにも参加されたのですか?
【森田】同行しました。名古屋の名所を使って色々と撮影しましたので、その近辺にお住いの方は「あ、あそこだ!」とすぐに分かると思います。名古屋市の消防局も全面的に協力してくださって、本物のハイパーレスキューと共演したり、ヘリも飛ばしてもらい、僕も乗せてもらいました。初めての経験ではしゃぎすぎて、気持ち悪くなっちゃいましたけど(笑)。あと、日本一という50mのはしご車も撮影に使用したり、名古屋城の天守閣を見下ろしましたよ!いろいろ大掛かりな撮影ができたのでかなり面白い話になると思います。
──森田さんにとってCGやVFXの面白さややりがいは、どの辺にありますか?
【森田】自由に物事を発想できるところが一番面白いですね。みんなで話し合ってるうちに出てきたアイディアが形になったときが一番面白いというか……。そういうことが自由に考えられるのが、CGの魅力だと思います。
──『レスキューファイアー』や「レスキュー」シリーズの作品の魅力についてお願いします
【森田】子供たちに向けての番組なので、ぱっと見としては、ビークルやヒーローが派手に活躍してカッコイイなって思ってもらう映像をバンバン見せるところですかね。テーマとしては「命の尊さ」なのですが、小さな子供にそこを説明してもつまらないだけと思うので、そうした派手さの中に、ドラマの要素を巧みに織り込みつつ、テーマが子供たちに伝わってくれたら嬉しいですね。そこにビークルやヒーローたちへの憧れが巧く同居していけるようにと、スタッフ全員は思って作っています。