同い年の友人、サイトー君に焼肉に誘われた。
つい三日前にも一緒に焼肉食べたのに。
サイトー君は牛にとって「天敵」とも言うべき存在である。
一年に一体何頭の牛を殺すことになるのか?というぐらいの肉好きなのだ。
いつものように奥さんとお子さんも一緒だった。
そういえば今回行った焼肉店はサイトー夫妻が出会った場所であった。いわばメモリアル焼肉店である。
そんな店で肉を焼きながら「近江牛を食べに先週滋賀県の長浜まで行ってきた」なんて話をするサイトー夫妻。出会いも肉、夫婦円満の秘訣も肉なのだ。
お子さんはまだ13ヶ月で、大人と一緒のものを口にすることは出来ないのだけれど、そんな一流の肉のニオイを頻繁に嗅がされているのだから、確実に肉エリートの道を歩み始めていることになる。
時折「たてったーたーあ」などと、活字にして再現するのが難しいようなフレーズを叫ぶばかりで、ちゃんとした言葉をしゃべるのをまだ聞いたことがなかったのだが、離乳食をママの手で口に運んでもらいながら突然「おいしー」と言ったのでびっくりした。
「今、おいしーって言ったよ!おいしーって!!!」
私はすっかり興奮してしまったのだが、「おいしー」というフレーズはとっくに憶えていたらしい。
「いいねー。いい言葉から憶えたねえ」と賞賛の言葉を送る私。いつも楽しく食卓を囲んでいるからこそ、「おいしー」から憶えたのだろう。いかにもこの夫婦のお子さんらしい。
ところが、実は「おいしー」は2番目で、一番最初に憶えた言葉は「パパ」だったそうだ。
パパか・・・・。
賞賛から羨望へ。
いつのまにか自分の発する言葉が「いいねー」から「いいなあ・・・・」に変わっていた。
何とかしなくては・・・。