東京・六本木グランドハイアットホテルで行われたジャック・ニコルソンさんの記者会見に行ってきました。
ニコルソンさんって言いにくいですね。
いっそのことニコルサンじゃダメですか?
・・・ダメでしょうね。
ニコルソンさんは今回、映画「最高の人生の見つけ方」のキャンペーンで来日しました。
ちなみに「最高の人生の見つけ方」というのは日本でのタイトルで、原題は「バケットリスト」です。
バケットというのは棺おけのこと。つまり、棺おけに入る前にやっておきたいことのリストがバケットリストなんです。
ニコルソンさん演じるエドワードとモーガン・フリーマンさん演じるカーターはともにガンで余命半年と宣告されたのを機に「死ぬまでにやっておきたい」数々の冒険に挑みます。
そのリストには「世界一の美女にキスをする」という項目がありました。
そこで今回の記者会見では「今までしたキスの中で最高のキスは?」という質問が出ました。
ニコルソンさんはしばらく「うーん」とうなったあとで、「So many・・・・(いっぱいありすぎて・・・)」と答えました。
かっこいいですよねー。
モテルソンさんと呼びたくなりました。
そしてニコルソンさんはこう続けました。
「今回の映画では、ラッキーなことに脚本の段階から参加させて貰いました。『世界一の美女にキスをする』とバケットリストに書き込んだエドワードが『どうやって?』とカーターに聞かれるシーンでは『Volume!(数だよ)』と答えるセリフを考えました。こんな風にたった一言でウィットを感じさせるセリフがちりばめられているのもこの作品の魅力です」
映画監督や、主演俳優のインタビューや記者会見では大抵「質問事項は映画のことについてに限らせて頂きます」というお達しが出ます。今回もプライベートに関する質問はご遠慮くださいというお達しが出ていました。この「今までした最高のキスは?」という質問はちょっと微妙な気がしましたが、ニコルソンさんはさすがですねー、上手に映画の話に戻しました。
映画の話といっても、映画の話なら何でもいいわけではなくて、基本的には今回の作品についての質問を中心にするべきじゃないかと思うのですが、「これから一緒に仕事をしたい監督は?」とか「天国に持って行きたい映画は?」という質問も出ました。
ニコルソンさんは「これから一緒に仕事をしたい監督は?」という質問には「今まで一緒に仕事をした監督全て」、「天国に持って行きたい映画は?」という質問には、自分が出演していない映画を挙げました。(ちなみにそのうちの一本は黒澤明監督の『蜘蛛の巣城』でした)
14年振りに来日した大名優に映画ファンとして聞きたいことがあるのもわかりますが、ニコルソンさんは「『最高の人生の見つけ方』の記者会見の会場で他の出演作の話はしたくないよ」と暗に伝えているように私には感じられました。
それなのに、さらにこんな質問をした人がいました。
「最高のジャック・ニコルソンの見つけ方を教えて下さい。最高なニコルソンさんはこの『最高の人生の見つけ方』の中にいるんでしょうか?それとも過去の作品の中にいるんでしょうか?それともプライベートのニコルソンさんが一番輝いているんでしょうか?」
「最高の人生の見つけ方」の会見で「他の作品の自分が一番いい」なんて言うわけないですよね?
ニコニコしていたニコルソンさんがオコルソンになってしまわないか?
あの『シャイニング』のときのような表情になってしまわないか?
私は内心ハラハラしましたが、ニコルソンさんはニコニコルソンのままこうおっしゃいました。
「私は記者会見に臨むにあたって、母から二つのことをしないように言われてきました。一つは『自分を誉めること』そしてもう一つは『比較すること』です」
こんな言い方で「他の作品の話はしない」という意志をやんわりと、でも明確に伝えたんです。
本当にユーモアの達人ですよね。
そしてまた今回の作品のPRにつなげます。
「と言いつつ、ちょっとだけ自分を誉めさせて下さい。この『最高の人生の見つけ方』はアンケートの結果、今までのワーナー・ブラザース映画の歴史の中で二番目に高い評価を貰っているんです。このことは自慢したいと思います。おかあさん、ごめんなさい」
ニコルソンさんのおしゃべりは終始ウィットに富んでいて、記者会見後も会場のあちこちから「面白かったなー」という声が聞こえました。
本人もおしゃべりは大好きだそうですが、あまりテレビのインタビューに登場しないのは「素の自分を知られすぎると、その印象が見ている人に焼きついてしまって、映画で役を演じているときに妨げになってしまう」からだそうです。
ちょっともったいない気がしますね。
それにしてもあんな大スターに気を遣わせちゃダメじゃんか!・・・・って私の母が言ってました。