東京、三鷹のジブリ美術館に行った。
平日の昼だというのに満員だった。
小学校入学前の子供を連れた親子が多い。
若いお母さんが小さい女の子を呼んでいた。
「メイ、こっちおいで」
自分の娘にメイと名づけるなんて、よほどジブリのアニメが好きなのだろう。
館内にある映像展示室「土星座」ではジブリが作った短編アニメーション映画が上映されていた。
空いている席を見つけて座ったら「あ!おじさんに座られちゃった」という声が聞こえた。
悲しみよ、こんにちは。
自分がおじさんであることは十分に自覚している。
それなのになぜだろう?
とめどもなく悲しみが湧き上がってくる。
もう二度とこの悲しみを味わいたくない。
私は「おじさんとは呼ばれない方法」を真剣に考え始めた。
そもそも誰が私のことをおじさん呼ばわりするかというと、見知らぬ若者だ。
私の名前を知っていれば名前で呼んでくれるはずだ。
四六時中「相澤伸郎」と書いたタスキを肩に掛けておけば、「おじさん」ではなく、「相澤伸郎」と呼んでくれるのではないだろうか?
なんだったら一票ぐらい入れてくれるかもしれない。
でも今の世の中、いたずらに名前が知れ渡るのも剣呑だ。
もう少し匿名性の高い方法はないものか?
「おじさん」という言葉は私の見た目について言ったものであるからして、「おじさん」であることよりももっとインパクトのある見た目にすればいいのではないだろうか?
そうだ!コスプレだ!
警察官の制服を着ていたら「おじさん」ではなく「おまわりさん」と呼んでくれるだろう。
白衣を着て聴診器をぶら下げていたら「お医者さん」、着物にちょんまげ姿なら「お侍さん」、スカートにハイヒールなら「おばさん」と呼んでくれるのではないだろうか?
いや、呼んでくれないだろうな・・・。
むしろ「おじさん」の前に「変な」という形容詞をつけられ、「何だチミは?」といぶかしげな目で見られるだろう。
そして「だっふんだ」と言わされるのがオチだ。
真剣に考えているのにちっとも現実的なアイデアが浮かばない。
「おじさんと言われないように、若返る努力をすればいいじゃないか」というご指摘もあるだろう。
でもそれは無理だ。
どのくらい無理かというと、突然だが、ここで神様の姿を思い浮かべてほしい。
神様って見た目おじいさんですよね?
耳も遠くて「とんでもねー、あたしゃ神様だよ」とかって言いますよね?(随所に現れる志村さんへのリスペクト)
神様ですら若返れないのよん。