2回潜ったところで、宿泊用の船に乗り換える。
全長35、7m、48人が泊まれる船である。
このままグレートバリアリーフの上で眠るのだ。
「津軽海峡冬景色」の人を含め、日帰りダイビングの客は乗ってきたボートで帰ってしまったので、日本人客は私ともう一人だけになった。
インストラクター見習いの二人、スタッフ2人をあわせても日本人は6人、そのほかの30数名は外国人である。
このあと午後一回、夜一回、翌日の午前中に3回、計5回潜ったのだが、そのうち3回はオーストラリア人インストラクターだった。
「どうせ海の中で使うのはボディランゲージだから、言葉が通じなくても問題ないでしょ?」と思われるかもしれないが、いろいろ勝手が違うのだ。
まず日本人インストラクターと比べ、泳ぐペースが早い。
そしてあまり後ろを振り向いてくれない。
エアータンクにはエアーの残りを示す残圧計というのがついていて、大体200からスタートして、50になる前に水から上がるのが目安とされているのだが、私の残圧計が50になっているのに、先を行く女性インストラクターにちっとも気づいてもらえなかったこともある。
そもそも私はエアの消費がかなり早い。
肩に力が入っているうえに、やたらあたふたするからだ。
ガンガンエアーを消費して、ガンガンCO2を排出する、地球に優しくないダイバーなのだ。
「おおーいっ!もう50だよっ!こっち向いてー!」
振り向いてもらおうと手足をバタつかせて懸命にアピールしても全く気づいて貰えず、ジタバタしたぶん、さらにエアーを消費してしまう。
くそうっ、何てこった!
海の中でも女の子に振り向いて貰えずに苦しむなんて!
一人で相当焦ったが、バカみたいだった。
船まではまだ遠いと思い込んでいたが、実はもう目と鼻の先だったのだ。
サンゴ礁など海底の地形に合わせて水中であちこち方向転換したので、私はすっかり船の位置を見失っていたのだが、基本的にこのダイビングは船の近くをグルグル回っているだけだった。
そして、そういうことは潜る前のブリーフィングで説明されていたはずなのだけれど、・・・・英語だったからねえ・・・。
つづく