新潟県十日町市の松之山というところに行ってきた。私の両親がここの出身で、今でも祖父の家が残っている。祖父は今、関東地方で暮らしているのだが、このゴールデンウィーク、その祖父を連れて、私の両親、妹夫婦、叔父、叔母が集まっているというので、合流することにしたのである。
松之山の最寄りの駅であるまつだい駅に父に車で迎えに来て貰ったのだが、乗る電車を一本間違えてしまい、すっかり待たせてしまった。車に乗り込むと父に「ニュースの本番だったら、一本間違えたら大変だよな」と言われてしまった。
確かにその通りだけれども、休みの日まで本番並みの緊張感を持ちつづけるのは至難の技だ。もともとうっかり者の私だ。それを懸命に仕事では隠しているのだ。ゴールデンウィークぐらいのびのびとうっかりさせてほしいものだと、迷惑をかけておきながら思ったりした。
松之山は長野県との県境に程近い山間の農村で、傾斜地にはたくさんの棚田があるのだが、豪雪地帯でもあり、5月だというのに雪で真っ白だった。ゴールデンウィークに訪ねたのは十数年ぶりである。祖父に会うのも3年ぶりだ。
祖父は、私が誰だか一瞬わからなかったようだ。ものすごくインチキくさいデザインの眼鏡をかけていたせいもあるが、どうも私がすっかり変わり果てていたらしく、相当違和感があったようだ。すいません、あなたの孫はこんな風になってしまいました。
「まあ、すっかりハンサムになって・・・」
その一方で、祖父の義妹さんからはこんな声をかけて頂いた。この方にお目にかかるのも本当に久しぶりであった。どのくらい久しぶりかというと「また背が伸びたんじゃない?」と訊かれるぐらい久しぶりなのだった。その後もこの方は私のことをずっと「ハンサムさん」と呼んでくださった。私も最初のうちは「いえいえそんな・・・」と答えていたのだが、そのうち「はい」と返事をするようになっていた。
ハンサムさんといえば、妹の旦那さんがなかなかのハンサムさんである。そのうえ、若いのに会社の社長さんなのである。仕事の話など全くしなかったが、日々プレッシャーがきついのかもしれない。夜、同じ部屋で寝たのだが、一晩に4回も寝言を言ったのだ。
「〇〇〇は×××しておこうっ」
私も寝ぼけていたので、しっかりと内容は覚えていないが、どうもリーダーとしての決断を迫られているような口調だった。私と違って、休みの日もしっかり本番の緊張感を持続しているようだ。しかも24時間。すごいよなー。私なんかあの晩見た夢の内容からいって、もし寝言を言っていたとしたら「そりゃないっすよー」とかそんなんだと思うもの。