「大きい車の方が万が一ぶつかった時、安全だよ」というアドバイスを受けていたにも関わらず、小型車を借りた。小型車と普通車で2000円も料金が違うのだから仕方がない。
土曜の午前中だというのに、レンタカーショップにはなぜか黒いスーツに金髪という、見るからにホストという感じの若者が3、4人たむろしていた。本当は店員さんに「きょう初めてのドライブなんです」と伝えて、あれこれ聞こうと思っていたのだが、そんな会話を聞かれたら「このおっさん、若葉マークだとよ」と囲まれ、「どれ見せてみろよ」と大事な若葉マークを取り上げられ、「か、返して下さい」と言っても、「ほれこっちだっこちだ」とパス回しされるに違いないので、黙ってそそくさと車に乗り込んだ。
乗り込んだと思ったら、すぐ店員が路上へ誘導し始めた。えーっ!カーナビの使い方の説明ぐらいあるかと思っていたのに・・・。心の準備も、CDの準備もできないまま、冒険の旅が始まった。
冒険のオープニングにはどうしてもBGMは欠かせないというのに、CDのかけかたがわからない。運転でいっぱいいっぱいになりながらも、手探りであれこれカーナビをいじくってみたが、画面が指紋だらけになっただけだった。緊張ですでに手が汗でベトベトになっていたのである。いじくっているうちにAMラジオが点いた。「ハイウェイ」が流れるはずだった車内に、「小学校からの英語教育、是か非か」というAMラジオのおしゃべりがこだましたのだった。
つづく