私の父と母も、叔父夫婦もしょっちゅう夫婦喧嘩をする。料理の味つけやちょっとした物忘れ、オナラが臭いなど、本当に屁みたいな些細なことで互いに文句を付け合ってばかりいる。
私などは「もうちょっと仲良くすればいいのに・・・」と思ってしまうのだが、叔父に言わせると「こうやって夫婦喧嘩するのが人生の楽しみの半分だ」ということらしい。
まあ、楽しいんならどんどんやっていただければいいんだけれど、「お前どうすんだ、この楽しみもしらずに50、60になっても独りぼっちだったら・・・・」なんて話を夕食の席で叔父がし始めたものだから、父まで「あんまり言われるのも嫌だろうと思って今まで我慢してきたけど、きょうは言うぞ。いい加減結婚しろ!」などと言い出した。
我慢してた?妹の結婚式で司会の女性に「ウチの息子どうですか?」と訊いたことや、年賀状に「そろそろ結婚を考えたほうがいいと思うがどうだろう?」と書いてよこしたことは忘れてるのだ。でもたしかに小さな字で隅の方に書いてあったから、本当は極太マーカーで書きたかったところを我慢したということかもしれないが、私だって好きで一人でいるわけじゃないのだ。でもそんなこと言っても「高望みしすぎなんだ」と言われるのが目に見えていたので、黙って嵐が過ぎ去るのを待とうとしていたら、ちっとも親の思いを受け止めていないと思ったのか、母が「どれほどあなたに結婚してほしいと思ってるかわかってない!」と言い出した。
「岩手県の遠野の・・・、えーと名前は忘れたけど、何とかっていう神社に行ってごらんなさいよ。『伸郎に嫁が来ますように』って札が貼ってあるから」
この間東北地方旅行してきたって言ってたけど、そんなことしてきたのか。恥ずかしー。どれほど多くの観光客に「この伸郎って人、よっぽど・・・・・」と言われているのだろう。トホホ。
「俺だって・・・・・」
今度は父だ。
「毎朝仏壇に手を合わせて『伸郎に嫁をお願いします。南無妙法蓮華経、チーン』ってやってんだぞ」
チーンって・・・・・・・。それに南無妙法蓮華経だと、ウチと宗派が違っちゃってる気もする。
その後、叔父から「本来人間には子孫を残そうという本能が働くはずなのに、最近の日本人はその本能が衰えているんじゃないか?」という発言が出た。そして、「本能」という言葉から連想したのか、私の両親は、「おまえにはフェロモンが足りないのだ」という結論を出した。「もっとフェロモンを出せ!」だって。「フェロモン出せ!」って言われてもねー。
つづく