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河口湖でブラックバスを釣ろう! その1

このブログにも再三登場しているテレビ愛知の仲良し集団、『絆』が分裂の危機を迎えていた。『絆』は平均年齢34歳の♂3人、♀5人で構成されているのだが、そのうち♀4人が『絆女子部』を名乗り、4人だけでバリ島へ行くというのだ。

「このままではちょっと悔しくないですか?」
こんなメールが届いた。留守番組の一人・山崎からだ。
「昨夜岸本と企みました。10月6日(土)、7日(日)、1泊2日で河口湖へブラックバスを釣りに行きませんか?」

こうして、取り残された3人の男、山崎、岸本、相澤と、女子なのに残されてしまった仁村の4人が河口湖に行くことになった。

河口湖畔のコテージに泊まり、バーベキューをして、ブラックバスを釣るということだけは山崎と岸本の間で決められていたようだが、詳しいことを決めるために一度みんなで集まって、飲みながら相談することになった。

ところが、みんなで集まろうと決めたはずの日の当日の夕方になっても誰からも集合時間や場所のお知らせが来ない。来なければ自分でしきればいいのだが、誰も動かない。今回は私も含め「しきろう」という意思をほとんど持っていないメンバーばかりだということがすでにハッキリと現れていた。

それでもやっと山崎から集合場所を指定するメールが来て、夜7時30分、会社の近くの居酒屋に集まった。


「とびっきりのネタ仕入れてきましたよ」
店に入り席につくなり、岸本が何やら自信満々の笑みを漏らす。
「飲んでから話しますよ」
何やねん!飲めなきゃできない話って。とても気になるのでそそくさと乾杯して、岸本の話を聞く。
「ブラックバスが食べられる喫茶店があるらしいっすよ」
・・・別に食べたくない。
と、簡単に岸本の案を否定したわりに、他の人間は誰も何も河口湖周辺のレジャー情報を持っていなかった。

『絆』では過去3回、旅に出ているが、今までは旅の前のミーティングには必ず何人かが行き先に関しての資料をどっさり持ってきていたのだが、どうもそういうことをしてくれるメンバーはみんなバリ島の方へ行ってしまったようだ。きっとバリ島ツアーはてんこもりの旅なんだろうなあ。それに引き換え河口湖組は「河口湖には何があるの?」と聞いても誰も何も答えられない。したがって集まったところで会議にならないのだった。
「キッシー(岸本)てあっちの大学だったよね」
仁村が岸本から情報を引き出そうとするが、岸本は山梨大学ではなく山形大学の出身なので、残念ながら期待に応えられないのだった。

そもそも何で河口湖なのか、ブラックバス釣るのなら琵琶湖で十分じゃないか?
そんな疑問を山崎にぶつけてみた。
「琵琶湖の周辺にはいい感じの宿泊施設が見つからなかったんですよね」
そんなことはないだろう。琵琶湖の周りにもいいホテルぐらいあるはずだ。
「いや、コテージが見つからなかったんすよ」
コテージ!私たちを置いて海外へ飛び立った絆・女子部はバリ島でコテージに泊まるのだった。そのバリ島組への対抗意識だけでコテージにこだわった結果の河口湖なのだった。

会議は早々に煮詰まった。煮るべき材料がないので煮詰まるというより、鍋を空焚きしていると言った方が正確かもしれない。
「・・・とりあえず役割決めよっか」
山崎が別の切り口から会議を進めた。
「写真係はニム(仁村)ね」
本題は置いておいて、すごい枝葉から決まった。
「やったー 何か役割与えられると嬉しいっ!カメラ二つ持っていこう」
必要以上に張り切る仁村。何のために2台持っていくのかわからないが、本人が楽しそうだからいいか。


2日目の午前中にブラックバスを釣ることだけは決まっていたので、つづいて「2日目の朝は何時に起きるか」を話し合うことになった。
「5時」
えーっ!やはり釣りは早起きしなくてはいけないものなのだろうか?でも一日目の夜は遅くまで飲むに決まっているのに翌日の朝早起きなんて出来るわけがない。
「朝焼けで赤く染まる富士を見たくないすか?」
まあ、見たいが、私が心配しているのはそう発言している山崎が起きられるのかどうかだ。彼の寝起きの悪さはいままでの旅でも散々目の当たりにしてきている。
「やっぱ4時半かな」
その山崎がなぜさらに早い時間を提案するのか。4時半と決められたら私は確実に4時半に起きるだろう。でも、そのあと結局他のメンバーが起きられなくて30分とか1時間とか待つはめになるのがイヤなのだ。とりあえず5時で話をまとめた。

「ちなみにどうやって起こされるのが一番いい?」
山崎は愛読書が「クローズ」という武闘派である。親切に起こしてやってるのに「うるせえぇ!」と拳にものを言わせられたら堪らない。お好みの起こし方を聞いておく。
「お母さんに起こされる感じで・・・・」
山崎の意外な答えに岸本が応じる。
「わかりました。フライパンをお玉でカンカン叩きながら朝ですよーって感じすね」
余計な荷物が増えてしまった。

2日目は釣りでいいとして、初日はバーベキューだけでいいのか。他にイベントはないのか?
「肝試し」
山崎が思いつくままに口にする。
「富士山に登る」
「登れないです」
すぐさま岸本が否定したが、山崎は納得しない。
「何で?勝手に登ればいいじゃん」
「閉ざされてます」
「誰が閉じてんの?」
「富士山です」
「富士山が自分で?」
山崎の疑問は疑問のまま残された。河口湖及び富士山周辺についての情報がまるでないのだから仕方がない。

結局我々はバーベキュータイムを充実させることで初日を過ごすことにした。
とにかく提案だけはする男、山崎からまた新たな提案があった。
「はんごうすいさんしようか?」
飯盒炊飯のことだった。名前を間違えちゃってるってことは今までやったこともないんだろう。
「そしてそれぞれ自慢のカレーライスを作る!」
「えーっ!みんな料理とかできるの?」
「あたしリンゴの皮とか剥ける」
仁村が胸を張って答えた。
「ちょっと待って下さい」
岸本が何かに気付いたようだ。
「カレーだと食べるのに10分もかからないですよね。それで終わっちゃいますよ」
なるほど、バーベキューの良さは時間をかけて食べられることなのだ。結局普通にバーベキューすることになった。

・・・今回の文章は「結局」ばかり使っているなあ・・・。

続いて初日の集合時間が決められた。8時集合という案も出たが、山崎が「仕事以外でそんな早起きしたことない」というので9時に決まった。そんな人間がさっき「2日目は4時半起床」と主張したのだ。すごいよね。

「出発時間が決まればほとんど決まったようなもんだ」と言い切る山崎。
いやーどうなんだろう。9時に出発してまっすぐ河口湖に向かうとしたら、バーベキューは4時に始まってしまう。
「じゃあ、4時に最大限おなかをすかせておけるように、早目にどのサービスエリアで昼食を取るか考えなきゃいけませんねー」
会議は意外な展開を見せ、富士宮のサービスエリアのメロンパンが有名だが、そこで食べてしまうとおなかが減らなくなってしまうので、夜食用にとっておくことなどが決められた。
また、朝の集合時間までに朝食を済ませておくかどうかについても真剣な議論がなされたのだった。

「よーし、じゃあおさらいしようか?」
山崎が仁村にこの会議で決まったことを発表するよう促した。
「まず集合時間は8時で・・・・」
いきなり最初から間違えていた。

つづく

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「振り向くな、振り向くな、後ろには夢がない」(寺山修二)
「しゃかりきコロンブス」(光ゲンジ)

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