「お前どっか海外でも行くの?6連休なんか取って?」
11月のある日、アナウンス部のシフト表を目にした制作部のS先輩が話し掛けてきた。
「サイパンに行ってきます」
「えー、マジでー!どうしたんだ?お前らしくもない。なんか普通じゃん」
私は今までボルネオやモンゴル、マルタなど、あまり普通の人は行かないようなところに行ってきた。それに比べると、サイパンは圧倒的に普通の観光地ということになる。
「で、誰と行くの?」
「・・・・一人です」
「え!一人?一人でサイパン!?」
「はい」
「それはスゴイ!!!だったら普通じゃない。やっぱりさすが相澤だなあ」
完全にバカにしている。
「何で一人なの?」
「まあ、いろいろありまして」
別に何もないが、見栄を張ってみた。
「でも一人でサイパンって有り得ないよなー。完全なリゾート地だもの」
多くの日本人にとって一人旅という言葉から連想するのはまず「みちのく一人旅」である。みちのくとサイパンはまさに対極。私は最も一人旅の似合わない場所を選んだと言えるのかもしれない。でも私にはサイパンに行く目的があったのだ。
「スキューバ・ダイビングの免許を取ろうと思うんです。一人だっていいじゃないですか、どうせ海の中に潜れば一人でしょ?」
「確かにそうだな。そして、死ぬときも一人で死んでいく・・・・」
つづく