一階には結構他のお客さんがいたが、金のカツラを被った私をみんな見て見ぬフリをしていた。これが今回一番辛かったことである。
早く2階に上がりたい・・・。
やがて2階から「冬のソナタ」のテーマが流れてきた。
私はこれを待っていたのだ。
BGMさえあれば何とか伝わるはずだ。
音楽の力を借りて、私はヨン様になりきった。「冬のソナタ」なんか一度も見たことないくせに。
階段を上り、雪だるまを山川に渡した。
「サランヘヨ」
つづいて店の人がバースデーケーキを運んできた。特製のキムチ入りケーキである。
そんなものまで店の人にお願いしていたらしい。
ロウソクの火を吹き消し、まるで罰ゲームのようなバースデーケーキをおいしそうにほおばる山川。
一体なぜキムチなのか?なぜこんなに韓国にこだわるのか?
私はまだ理解していなかったが、私が渡した雪だるまの底から1万円分の旅行券が出てきたところで、ようやく理解した。
「みんなで一緒に韓国に行こう!」ということらしい。
今回のバースデーパーティーは韓国旅行へのテンションを盛り上げるイベントでもあったのだった。
しかし、あれから2ヶ月、韓国旅行は実現していない。予定も立っていないようだ。
またヨン様に変装した意味を見失いそうである。
おしまい