友人のサイトー夫妻とごはんを食べに行った。2歳のお嬢さん、ミーちゃんも一緒だ。
蟹とアボカドのサラダを注文したら、蟹の甲羅がフタ代わりに載っていた。ハサミや脚はすでに取り外されていたので、「これではミーちゃんには蟹だとわからない」と、奥さんが蟹の絵を描いた。
するとミーちゃんが「エビも!」と言うので、奥さんはエビの絵も描き始めた。
「尻尾の感じがちょっと違うんじゃない?」
偉そうに指摘しつつ、私も筆を執った。
実際に描いてみるとエビって意外に難しい。口がどんな形をしていたか、眼がどういうふうについていたか、思い出せない。
ひどい絵を描いてしまった。
「他に何か描いてほしいものない?」
悔しかったので、別のお題で汚名返上を図る。
「エビフライ!」
そうきますか・・・。
描いてみたらこれまた意外に難しかった。やたら衣の厚いエビフライになってしまった。
「他には?」
しつこくミーちゃんにお題をせがむ。
「いす」
また意表を突かれてしまった。「なぜイスかなあ」とぶつぶつ言いながら、小学生の夏休みの工作のような4本脚のイスを描いたが、そんなものを描いても私の絵心は満たされない。
エビフライとかイスじゃなく、何か命のあるものが描きたい。質問を変えてみた。
「好きな動物は何?」
するとミーちゃんは急に声を張り上げた。
「だいいちもん!」
クイズ番組の司会者口調だ。
サイトー君はアナウンサーである。アナウンサーの子供はこんなに小さいうちからアナウンサーっぽいしゃべりを身に着けるのだなあと関心し、「すごいすごい」と喝采を浴びせた。
ミーちゃんはキャッキャと嬉しそうに笑った。
あれ?このパターンは、前にもあったな・・・。
以前歌を歌ってくれた時、「上手だねー」と拍手したらそのあと6回も同じ歌を繰り返したのだ。
「だいいちもん!」
案の定今回もオートリバース機能が作動し始めた。
結局6回も「だいいちもん!」というシャウトを聞かされ、好きな動物の件はまるで忘れ去られたのだった。
サイトー君にはぜひ次会うまでに「だいにもん!」という言葉をミーちゃんに教えておいてほしいと思った。できれば「だいいちもん!」と言ったあと、問題も言わずに「だいにもん!」と言っちゃうというパターンを見てみたいものである。