我々は店を出て近くの大きなホテルに向かった。
そこでタクシーを捕まえようというのである。
タクシーは見つかったが、ドッグレース行きはあっさり中止になった。
ドライバーによると、ドッグレースはこの時期開催していないというのである。
仕方がないので飲みに行くことになった。
Aさんが「あんまり日本人観光客が来ない、いい感じのバーはありませんか?」とドライバーに訊ねる。
すると、ドライバーはホテルの電話帳を借りて、あちこち電話し始めた。
日曜日なのでやっている店が少ないらしい。
店を見つけるのに15分ほどかかった。
バンドが演奏しているライブバーだという。
メインストリートから外れて少々行ったところにその店はあった。
この場所なら確かに日本人観光客は来なさそうだ。
店にはいるとステージでは白いブーツにデニムのショートパンツ、白いタンクトップ姿のフィリピン人4人組が英語の歌を歌っていた。
「コンバンワ~」
我々が正面の席に座るとボーカルのIZAM(仮名)がいきなり日本語で話しかけてきた。
日本人観光客が来ないところとリクエストしたはずだったが、そんなことはないようだった。
やはりグアムではどこへ行っても日本人は上客なのだろう。
「次ハ『ハチハチ』ノ歌デス。知ッテマスカ?」
「あ!モンパチ(モンゴル800)のこと?」とB女史が大きな声で問い返した。
「ソンナコトナイデス」
確かに「ハチハチ」から「モンパチ」というのもかなり強引だと思うが、「ソンナコトナイデス」って・・・。
あまりにもキッパリ否定しすぎではなかろうか。
まあ、日本語力が高くないだけで、決して悪気はないんだろうけど。
さらに「『ハチハチ』トイウノハ、フィリピンノ歌デス」と言うので、みんなで「知るかいっ!」と突っ込んだのだった。
IZAMという仮名にしたのは、このボーカルがいわゆる一つのニューハーフだったからなのだが、B女史だけはずっと女性だと思い込んでいたらしく、その事実を告げられると心底驚いた様子で「え!気づかなかったの私だけ~?私の目はふしだらってことか~」と叫んだのだった。
残念ながらB女史もあまり日本語力が高くないようである。