座敷にはカラオケセットも置かれていた。
500円払うとメイドさんが歌を歌ってくれるらしい。
一体どんな歌を歌ってくれるのだろう。
「得意な歌は?」
「『あゆ』とか・・・・」
「じゃあ・・・・・『与作』(ニヤリ)」
あゆが得意と言っている人間にサブちゃんのド演歌をリクエストするなんて、超Sっぽくないですか?
私はさっきからずっと自分のSっぽさをアピールする機会を伺っていたのだ。
ところが、そんな意図はちっとも伝わらなかったらしく、みんなから「おっさん!」という言葉を投げつけられたのだった。
さらに「踊れる曲とかないの?」と訊かれたメイドさんが「ハレ晴レユカイ」と答え、みんなが「何?その曲」と言っている中で「ああ、『涼宮ハルヒの憂鬱』ね」と口走ってしまったために、アニメオタクのレッテルまで貼られることになった。
Mでおっさんでオタク。
ふう(溜め息)・・・また今回もか・・・。
どうも私はそういうイメージを持たれやすいのだ。
そういう要素が全くないとは言わないが、本人としてはむしろ「Sで若作りのスポーツマン」のつもりなのに・・・・。
自分が外からどう見えているか、なかなか自分には見えないものかもしれない。
そして額の傷も。
家に帰り、洗面台の鏡で改めて額の傷を確認したところ、全部で4箇所に出血の跡が認められたのだった。
おしまい