メイドさんが去ってもまだ頭が痛い。何だかヒリヒリする。絆創膏を剥がすと、ガーゼの部分に血が滲んでいた。
本当にタマゴの殻が刺さったのだ。
こんなのちっとも「萌え萌え」じゃない。
こんなのは「萎え萎えタマゴ」だ。
それでも座の空気をしらけさせてはいけないと思い、笑顔をキープしていると、女性メンバーから「嬉しそうな顔してるねえ」と声を掛けられた。
心外である。
ここはハッキリと誤解を解消しておかなくてはこの先も“M”キャラとして扱われてしまう恐れがある。
「僕はねー、MじゃなくてSですよ」
「ウソー!」
「ホントですって!」
「じゃあ・・・・・♪相澤の、Sっぽいとこ見てみたい~」
えー!?ここで?!
そんなとこどうやって見せたらいいんだろう?全く思いつかない。
あれ?俺って本当にSなのかしらん?
ちょっと自分自身を見失いそうになった。
それにひきかえ「Sっぽいとこ見てみたい」と無茶な要求をした女性は完全なSだ。
さらにもう一つ「萌え萌えタマゴ」をオーダーしたのだ。
再びタマゴを手に現れたメイドさんが「今度はどちらのご主人様ですか?」と問いかけると男性メンバーたちは「どうぞどうぞ」とダチョウ倶楽部のように必死に譲り合った。
そして女性メンバーたちはその様子を見て大笑いしていた。
このメイド居酒屋は、男性がメイドに奉仕してもらうのを楽しむための店というよりも、メイドに翻弄される男性たちを見て女性が楽しむための店なのかもしれない。
つづく