ケアンズに到着したのは深夜。
翌朝ケアンズの港から高速ボートに乗り、ノーマンリーフというダイビングスポットへ向かう。
船室は2階建てで、40人ほど乗れるそこそこ大きなボートだったが、風が強かったためかなり揺れた。
ボートの中では最も揺れが小さいという一階後部デッキは船に弱い人々のたまり場になっており、どよーんとした雰囲気が立ち込めていた。
私もかなり気持ちが悪くなっていた。
こんなに船に弱いのにダイビングするなんて、趣味の選択を間違ったなーという気になってくる。
私の隣では日本人男性が席にもつかず、支柱に捕まって仁王立ちしていた。
なるべく遠くを見たほうがいいということだろう、眉間に皺を寄せながらずっと水平線を睨み付けていたが、すでに気持ち悪くなっていたらしく表情はとても切なげで、南太平洋に来ているのに、顔だけ見ると「津軽海峡冬景色」が聞こえてきそうだった。
日本人だけではない。
斜め前ではアメリカの青春ドラマなんかでいじめられっ子役を演じそうな金髪のポチャッとした若者がエチケット袋を片手にものすごく気持ち悪そうな表情をしていた。
その表情を見てるだけでこっちまで吐きそうになってくる。
んっ!ちょっと待て!
ダイビングツアーのスタッフTシャツ着ているじゃないか!
彼は仕事の選択を誤ったようである。
つづく