ホテルに戻り、浴衣に着替えた。
今回のイベントには日本を代表して参加しているのだから、シンガポールの皆さんに日本の伝統をお見せするのも大事なことだと思い、出発の前日に地元の大須商店街で、浴衣・帯・下駄のセットを3980円で買ったのだ。
帯はマジックテープで止めるだけという優れものだ。
マジックテープ。
日本の伝統も何もありゃしない。
コスフェスト2日目のオープニング。
私はこの浴衣姿でステージに立ち、英語でスピーチすることになっていた。
英語でスピーチするなんてシンガポールに着いてから初めて聞いたので、和英辞典も持っていない。
難しい話は無理だ。
簡単な英語にしよう。
きのうの様子を見た感じではこのイベントの参加者はかなり日本語に興味があるようだから日本語を随所に織り交ぜよう。
HOOーとか言って盛んに声を出したがっていたから、何かみんなで声を揃って出せるようなものを入れてみよう。
普段日本では「お前のキャラじゃないだろっ!」と突っ込まれそうなものをこの際だからやってみよう。
となると・・・・・・・アレだな・・・・
でもウケるだろうか?
ドキドキしていた。
ドキドキのあまり、すっかり挙動不審になっていたためにまだイベントが始まる前からまた「Are you OK?」と聞かれてしまった。
そんな状態で待つこと70分。
70分って!
心臓が持たないよ!
イベントがそんなに遅れてスタートするなんて、シンガポールの人は日本人と時間の感覚が違うのかもしれない。
立ち見のお客さんたちも文句も言わずおとなしく待っている。
70分待たされた挙句聞かされるのはヘタクソな英語のスピーチですけど、いいですか?
以下、スピーチ全文(太字は日本語)
こんにちはー! (客席からも「こんにちは」の声)
アニメーションの国からやってきました。(HOOーという反応)
こんなにたくさんの人が集まってくれて驚いています。
皆さんの日本文化への愛にお礼を言います。
ありがとぉーっ! (誰にも伝わっていないと思うが谷村新二さんのモノマネで)
きょうは皆さんに日本の文化をひとつ教えたいと思います。
日本ではたくさんの人が集まったときにみんなでこれをやる習慣があります。
まずお見せしましょう。
いち、にぃ、さん、ダーッ!
いちは1です。発音は英語のITCHY(痒い)と同じです。(痒いーという表情でややウケ)
にぃは2。発音は(ひざを指差して)KNEEと同じです。
さんは3。発音は(天井を指差して)SUNと同じです。
そして、右こぶしを突き上げてダーっ!
ダーに意味はありませんっ。(言い切ったらウケた)
が、パワフルにしてくれるんです。
では皆さんも一緒にやってみましょう。
行くぞーっ!
いち、にぃ、さん、ダーッ!
気持ちよかったあ。
お客さんがどーのというより、自分が気持ちよくなってしまった。
満足だ。
やりきった感じがあった。
そのまま帰ってしまいそうになるほど。
つづく
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