「弟の結婚式ついでに北海道の旅 その3」
北海道のほぼ真ん中にある深川市。その深川市を一望できる丘の上の教会で弟の結婚式は挙げられた。
素晴らしいロケーションだった。緑の丘に白いウェディングドレスがとてもよく映える。そして、その後ろにはヨーロッパの田園地帯のようになだらかな大地が遥か遠くまで広がっている。
頬をさわやかな風が撫でる中、記念撮影をしている新郎新婦を見ながら、母親が「こういうの見てると、またあなたにプレッシャーかけたくなる」と言い、私をブルーにした。6月の鮮やかな緑の丘で、私の心は10月の海のような群青色に染まった。
式の前にリハーサルがあった。リハーサルには新郎新婦と両親だけ出ればよかったのだが、今回の式の出席者は新郎新婦の両親と兄弟、合わせて8人だけだったので、全員リハーサルから立ち会うことになった。こうなるともうリハーサルも本番もない。
リハーサルが始まり、新婦がバージンロードを歩き始めると、目にはもう涙が光っていた。バージンロードを歩ききり、エスコートしてきたお父さんの腕から手を離さなくてはいけないのに、なかなか離すことができない。回りの人々も目を赤くしている。そんな中ひとり「本番にとっておけばいいのに」などと考えている自分に気づき、愕然とした。本当にイヤらしいテレビマンの姿がそこにはあった。「マスコミ人である前に人間であれ!」大学のゼミの教授の言葉を今一度肝に銘じなくては。
さて、本番。新婦は泣かなかった。本番はしっかりやらなくちゃいけないという強い気持ちで臨んでいるのが伝わってきた。リハーサルも本番も両方見るとこういう感動もある。印象的だったのは弟の背筋がピンと伸びていたこと。あれは男の背中だった。いいものを見た。
つづく