橋の上でバスを止めて、ガイドさんが川の周辺を念入りにライトで照らす。そろそろサケの遡上が始まっており、それを狙うクマが来ているかもしれないのだ。
「みなさん、クマというとまず川でサケを獲って食べているイメージを思い浮かべるんじゃないかと思いますが、実際にクマの食事に占めるサケの割合ってどのぐらいだと思いますか?」
ガイドさんからの問いかけに車内から「20%!」とか「30%!」という声があがる。
「実際は0,4%に過ぎないんです。じゃあクマが何をたべているのかといいますと、94%は植物なんです。残りの6%が動物性タンパク質ですが、それもほとんどは蜂などの虫なんです。でも、テレビではクマがサケを獲って食べる映像ばかり目にしますよね。それはなぜかというと、カメラマンの都合なんです。クマが森の中で木の実を食べる様子は、まず撮影できませんが、サケを食べているところは、サケが遡上するシーズンに河口で車を停めて1週間も待っていれば絶対撮れますからね。その映像を私たちは繰り返しテレビで見せられて、クマはサケばかり食べていると信じ込まされているんです」
テレビの怖さはテレビ局から離れたところで気づかされるものである。
つづく