次の日も朝からバスツアーに参加した。日中のバスツアーは、バスツアーといっても知床国立公園まで運んでもらうだけで、あとはほとんどウォーキングである。
バスを降りると、まず最初にガイドさんから公園内を歩くにあたっての注意事項をきく。「もしクマに遭遇したらどうするか」である。昨夜のバスツアーでは、結局クマを見られなかったので、むしろのぞむところではあるが、命までとられてはかなわない。真剣に耳を傾ける。
「クマに会ったら死んだフリ、とよく言われますが、これは危険です。クマは人間の人差し指くらいの大きさの、鋭い爪を持っています。人間が横たわっていたりしたら、その爪で『これ何だろう?』とひっくり返したりするかもしれません。それだけで大ケガをしてしまいます」
恐ろしい。ではどうすればいいのか?
「決して目をそらさずに、ゆっくりと後ずさりしてください。自分だけ助かろうと思って背中を向けて走り出したりしたら、まず最初に襲われますよ」
クマさんに出会っても、スタコラサッサッサノサーは命取りなんである。
つづく