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知床・釧路でルールルル その6

「9月になると風が変わるんさー、晴れてても波が立つんです」

バスツアーは午前中で終わり、午後からはウトロ港から出る遊覧船で海から知床半島の断崖絶壁を見てみようと思っていたが、この日は一日中欠航であった。

とりあえずバスのターミナルに行ってみたが、駅に向かうバスが出るまでにはまだ時間がかなりあった。バスターミナルの脇にペレケ川という川が流れており、川沿いに遊歩道があるようなので、ちょっと歩いてみることにした。

「んっ?」何気なく目をやると川が変だった。何やらウジャウジャと動いている。カラフトマスの遡上が始まっていたのだ。

小さな川は人工的に何段も階段状になっているところがあり、一番大きな段差は1m以上あった。その手前のところは段差を登りきれないマスたちであふれかえっていた。懸命に何度も段差に挑むマスたち。感動的な光景である。「力の限り生きてやれ!」頭の中で松山千春さんの「大空と大地の中で」のそのフレーズだけが繰り返し流れた。こういうものを目にするとやはり懸命に生きることの美しさに気づかされる。その一方で、「これぐらい頑張った者だけに子孫を残す資格が与えられるのか・・・・俺、結婚できるのかなあ?」という不安がよぎったりもする。

私の隣では、りっぱなカメラを持ったおじいさんが、マスが段差を登りきる瞬間を写真に収めようと悪戦苦闘していた。マスが段差をクリアする確立は5分の1ぐらい、しかもトライするタイミングがわからないのだから、なかなか難しい撮影である。

私もデジカメを構えた。このマス行きそうだ!すかさずシャッターを押す。バタバタバタバタ(マスが激しく水をかく音)やったー、登りきったー!カシャッ・・・・・・・遅っ!どれだけシャッター押してからカシャッていうまで時間がかかるんだデジカメは!

このデジカメでは無理だな・・・・。よし、行くとするか。カラフトマスとは対照的なあきらめのよさを発揮して、川を後にするのであった。

つづく

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【好きな言葉】
「振り向くな、振り向くな、後ろには夢がない」(寺山修二)
「しゃかりきコロンブス」(光ゲンジ)

【担当番組】
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