車に乗り込み、テレビをつけると、すでにWBC日韓戦が始まっていた。スポーツ部山根が野球好きなのはもちろんだが、、広報部の大久保も東京ドームまでWBCのアジア予選を観に行くほどの野球好きである。観光そっちのけでみんなで王ジャパンを応援することになった。
いい試合だった。特に名古屋在住の我々は、ドラゴンズの福留選手が代打で登場し、見事に先制ツーランを放ったシーンに熱くなった。やはりみんなで見るとエキサイトしますな。といいつつ、私は8回に多村選手が6点目のソロホームランを叩きだしたとこまで見て眠ってしまった。いや、もう日本が勝つのは間違いないと思ったんで・・・・。
目を覚ますと二人がゴルフ中継を見ていた。関東や関西では最後まで日韓戦を中継したらしいが、中部地方では途中からゴルフ中継に切り替わっていたのだ。
「ねーねー、ゴルフになってんのに何でまだ見てんの?」
「日韓戦が終わった瞬間に野球中継に切り替わるかもしれないじゃないですか」
「そうしたら王監督のインタビューなんかも見られるかもしれないし・・・・」
すごい熱意。正直私にはそこまでの熱意はなかった。申し訳ないけれども、ここは多数決よりも先輩の権限を優先させてもらう。次の目的地に向かって出発だ。
とはいえ、どこへ行くか決めていなかった。運転も行き先も大久保に任せていたら、石川県小松市にある、松井秀喜ベースボールミュージアムに着いた。びっくりした。一体どれだけ野球好きなのか!
松井秀喜ベースボールミュージアムで、とくに大久保の心を捉えたのは松井選手が使用した歴代のバットが展示されているコーナーだった。
ジャイアンツ時代、松井選手のバットのスィートスポットはだんだん小さくなり、グリップも細くなっていった。その方がコントロールするのは難しいけれども、しっかりとらえれば飛距離が出るのだ。
ところが、松井選手はメジャーに行ってまたスィートスポットが大きく、グリップの太いバットに戻している。向こうのピッチャーは手元で微妙に変化するボールの使い手が多い。扱いやすいバットで、まずミートを心掛けようということらしい。
大久保の目はキラキラと輝いていたが、私は寝起きということもあって、そこまでテンションが上がらなかった。
「バットがたくさん並んでるねー」
兼六園の時と同様、見たまんまの感想を口にしただけだった。何だか立松和平さんのリポートの入り方みたいなコメントだ。
この日の宿は福井県の越前海岸に取っていたので、宿へ向かうついでに東尋坊へ足を伸ばす。
叩きつける日本海の荒波。ダイナミックな景観。しかし、何か足りない。
東尋坊といえば、火曜サスペンス劇場のクライマックスによく登場する場所だ。我々もそのイメージを持って、ここに足を運んでいた。そうだ、足りないのは英一郎だ。是非、岬の突端に 船越英一郎さんの銅像を立ておいてほしいものである。
つづく