やはり私は車の運転に向いていない。2回運転しただけで、とっとと結論付けた。あきらめのよさには自信がある。
「もう自動車教習所なんかやめたいです」
得意の泣き言を、会社で私に免許を取るようにすすめたプロデューサー氏にぶつけた。
「最初は誰だってうまく運転なんてできないよ」
プロデューサー氏は一生懸命慰めてくれたのだったが、すっかり下がりきった私のテンションはなかなか上がらない。
「やっぱりそもそも僕には免許必要ないんじゃないかと・・・・」
「お前なー、考えてもみろよ。もし津波とか来たらどうすんだ?子供とかいたら抱きかかえて走って逃げるのか?車がなきゃそういう時に大切な人を守れないじゃないか」
プロデューサー氏は、私に免許を取る決心をさせるまで半年の間説得を続けたのだ。車を持つメリットなどもうすっかり言い尽くしていた。地球規模の災害でも持ち出さないと新しい説得材料はなくなっていたのだった。
さらにたまたま近くにいた女子社員、A子さんも巻き込んで、私のテンションをあげようとする。
「A子だって、もし相澤がかっこいい車で乗り付けてドライブに誘って、実は前からお前のこと好きだったんだとかって告白したら、コロッて落ちるかもしれないぞ。・・・・な?」
A子さんが間髪入れずに答える。
「いえ、ドン引きです」
ー終ー
あんなに声張って言わなくてもいいのに・・・・・。