洗顔スクラブを歯磨き粉と間違えた朝、地下鉄に乗り、ふと気付くと、降りるはずの駅を過ぎていた。
慌てて次の駅で降りたら、車内に傘を忘れてしまった。
そんな状態で一日が過ぎた。定食屋さんで、醤油と間違えてソースを冷奴にかけた夕食をとり、帰宅すると、玄関に地下鉄に忘れたはずの傘が立てかけてあった。最初から持っていかなかったのだ。
ヤバイ。なんだかものすごく疲れているみたいだ。あすのにちよう日はねてよう日にしよう。
ところが、翌朝6時30分に起こされた。隣の部屋で目覚まし時計のアラームが鳴ったのだ。私の眠りはとても浅い。たとえ、マンションの隣の部屋だろうと、アラームが鳴ればすぐ目を覚ましてしまう。
それなのに、隣の住人はちっとも目を覚まさない。アラームは延々と鳴り続けた。計17回も「ピピーッ」という音が繰り返された。さらに、5分後12回、さらに5分後19回も鳴った。さすがにもう起きただろうと思ったら、30分後、また鳴り出した。
二度寝しやがったのだ。こっちは仕方なく起きて、部屋の掃除だの、洗濯だの始めているのに!
しばらくすると、今度は携帯電話の着メロが聞こえてきた。きっときょうの待ち合わせ相手からだろう。ざまーみろ、遅刻だ。着メロは中島美嘉さんの「雪の華」だった。真冬の曲ではないか。季節的にも大遅刻だ。
またしばらくすると、別の着メロが聞こえてきた。待ち合わせの相手は一人じゃないのだろう。今度の曲は「アヴェ・マリア」だった。やはりクリスマスあたりから隣の住人の季節は止まっているようだ。あんな安らかな曲で目が覚めるわけがない。その後隣の部屋では「雪の華」と「アヴェ・マリア」が交互に鳴り響いたのだった。
一方、私はすでに部屋の掃除と洗濯を終えていた。それでもまだ9時前だった。特に買いたいものがあるわけではなかったが、バーゲンセールに行くことにした。
私が行ったデパートの紳士服売り場の一角には、サッカー日本代表のレプリカユニフォームもバーゲンセールの対象品として並んでいた。背中にNAKATA 7 と入ったユニフォームが7700円。かなり安くなっていたが、今からこのユニフォームを着たら、「雪の華」の着メロと同じくらいの遅刻感が漂うだろう。
特に買いたいものはなかったはずなのに、3点も購入してしまった。1点はよく見るとセール対象外のものであり、あとの2点は果たして似合うのかどうか・・・・・。バーゲン会場に行くと、毒気にあてられるというか、勢いがついてしまうのだ。「早起きは3文の得」とは全く逆の結果になってしまった。やっぱり、ねてよう日にしとけばよかったのか・・・・。