今回のメンバーは20代は一人だけで、あとの7人はみな30代である。夜がふけてくると何となく顔に疲れや年齢が感じられるような気がしないでもなくはない。そんなことをみんなうっすらと感じ取ったのか、加齢臭の話題になった。
岸本が「加齢臭は耳の後ろのあたりから臭ってくるんですよ」などというので、みなお互いにチェックし始めた。すっごい仲良しぶり。すると約一名、耳の後ろからかなりはっきりと加齢臭を発している者がいることが判明した。しかも気の毒なことに女性である。みんなその女性の耳の後ろのニオイを嗅いでは「おっさんだっ、おっさんがいる!」と大騒ぎし始めた。
その女性が「よくぞ見破ったな明智君!」などといいながら合成樹脂のマスクを外すとおっさんだった、なんてことがあったとしても「ああ、まあじゃあしょうがないか・・・」と納得してしまうほどのカグワシイ香りだったというが、私にはそんなニオイを嗅ぐ勇気がなくて、確かめることができなかった。
もしかして自分も臭うのかしらん?と怖くなり、他の人に思い切ってチェックしてもらったが、「相澤さんはいつもの相澤さんって感じのニオイしかしません」と言われた。そう言われると「相澤さんって感じのニオイ」がどんなニオイなのかが気になったが、これまた勇気がなくて聞けなかった。小刻みに臆病な私だ。
午前1時にその店を出て、カラオケボックスへ向かう。結局、名古屋でも金沢でもすることは同じだ。
カラオケボックスに入ったが、私は一曲も歌わなかった。喉の奥がヒリヒリしていたのだ。さっき大声で「3人目!」と仁村を怒鳴りつけてしまったせいだった。あんなことぐらいでそこまで本気で怒鳴るなんてアホである。それに急に疲れが出てきていて、とても歌など歌う気になれないというのもあった。こんなことは今までなかったことである。昼間の運転のせいだ。みんなを乗せて運転するプレッシャー。ずっと何かに追い詰められているような心境だった。そんな気持ちを引きずっていたのだろう、その晩潜水艦に乗って出撃する夢を見た。
翌朝、10時にロビーに集合した。昨夜おっさん呼ばわりされた女性の耳の後ろがカサカサになっていた。風呂でものすごく念入りに耳の後ろを洗ってきたらしい。
つづく