タイヤのチェーンが切れた。
「ガガガガガ」と激しく車体を打ち付けつけるチェーンの切れ端。切れたのは右側のタイヤのチェーンだったから、運転席の斜め下あたりを直撃する。こんなときに限って、お腹を壊している岸本が運転席に座っていた。「頭がガンガンしておかしくなりそうです」という岸本を見ていたら「上は洪水、下は大火事、これなあに?」というなぞなぞを何となく思い出した。
最寄りのサービスエリアで車を停めてJAFに救援を求めたところ、到着するまでに1時間半もかかるという。せまーい休憩所で途方に暮れる我々。そこへ一台のパトカーが通りかかった。
「ちょっと聞いてきます」
岸本が走り出した。さっきまでゾウガメのような動きがウソのように俊敏な動きだった。
編成部に異動になる前は報道部で県警担当をしていた宮田(♀)がつづく。警察沙汰なら任して!という勢いだった。2人はパトカーを呼び止めて、中の警察官にインタビューをし始めた。まるでパトカーを検閲しているみたいだ。
戻ってきた二人が検閲の結果を報告する。
「雪も降ってないし、チェーン規制を解除しようかどうか迷ってる段階みたいです。チェーンはここで外していいから、次のインターチェンジで降りて下道を行きなさいって」
「よかったー」
一斉に安堵の声を漏らすメンバーたち。ここに至るまでの苦労は筆舌に尽くしがたいものがあった。筆舌に尽くしがたいので詳しくは書かないけれど、寒い中、チェーンの装着に四苦八苦したのにも関わらず、あっという間に切れ、果てしなく続く「ガガガガガ」という轟音。とにかく大変だったのだ。しかし、そんな苦労を共に乗り越えたことで、我々の絆は確実に深まっていた。
「よーし、『絆』Tシャツを作ろう!」
絆Tシャツ。友情を確かめ合うためには安易なパクリも辞さない我々だ。胸を熱くしているから真冬にTシャツ一枚だってきっと寒くはないさ。
つづく