簡単に振り付けを教わっただけでいきなり本番に突入。「YOU、やっちゃいなよ!」大切なのは勢いである。
みんなスケートを履いていたけれど、狭くてデコボコしたバルコニーの上に大人数が乗っているのでぶつかるのが怖くて滑れない。みんな小またでヨチヨチ歩くだけである。
特に全員が前の人の肩に両手をかけて列を作る“ムカデ”のパートはひどかった。本来このパートは光GENJIがお手本としたミュージカル、スターライトエクスプレスの疾走感を最も残している部分であり、7人が7両編成の特急列車のように見えるところだったはずなのに、我々といえばまるで生まれたての小鹿がムカデを作っているようなのだった。
ムカデの列はやがて先頭の人が最後尾の人にくっついて円になる。本来ステージいっぱいに広がってグルグルとダイナミックに回るのだが、我々はあまりにも小股でヨチヨチ歩くので前後の間隔がどんどん狭くなり、円がみるみる小さくなる。さらになぜかこの円がどんどんどんどん左にずれていくので、VTRで見てみると画面の右半分に誰もいない状態がしばらく続いたのだった。
「ひでえなー」と言いつつ、一発OKだ。面白ければそれでいいのだ。しかし、これで撮影終了ではない。いかにもアイドル風にローラースケートで海辺の舗道を滑走しているシーンや砂浜で戯れているシーンなど、場所を変えて次々に撮影していく。移動は徒歩であり、すれ違ったカップルに小声で「イタイ」と言われたりした。
階段に並んで左右に上体をゆらしながら「♪ランラランランランラン~」と歌うシーンも撮影した。ちょっと想像して頂きたい。エメラルドグリーンの美しい海からカメラが右にパーンしていくと30代のカラフルハチマキ集団が「ランラン」しているさまを。
ここまで撮影して一旦昼休み。バカも休み休みにしないとね。港の近くの食堂でラーメンを食べる。あっさりした醤油スープが二日酔いの体に優しく染み渡っていく。これでようやく二日酔いから開放された。しかし、それは同時に午後からは完全にシラフの状態であんなバカバカしいことをしなくちゃいけないということでもあった。
つづく