宿から5分ほど歩くと港のそばの海岸にステージ状のバルコニーがあり、最初の撮影ポイントに決まった。このバルコニーの上で、私も含めてさっきの「パラダイス銀河」を踊るという。
「えー、マジで・・・・・」
「踊る阿呆に見る阿呆、どうせ阿呆なら・・・・」という文句があるが、踊る阿呆と見る阿呆の間には実はかなり距離があるんだなーということに初めて気が付いた。さっきは見てるだけだったから気楽に楽しめてよかったよなー・・・・。何かもう遠い目でバルコニーの向こう側に広がる海を眺めた。
カメラをセッティングするメンバーたち。私は「これ練習してください」とインラインスケートを渡された。光GENJIといえばスケートは欠かせない。「なるほど・・・・。これを履いてみんなの周りを適当にぐるぐる滑って光GENJI感を出すのが俺の役目か。そもそも振付け憶えてないからみんなと一緒に踊るの無理だしね。何にせよ踊らなくていいみたいだな」と、ほんのちょっとだけ安心してスケートの練習を始めた。
もともとインラインスケートには挑戦してみたかったので、滑り出したら楽しくなってきた。悲しい格好をしていることも、二日酔いの気持ち悪さもしばし忘れ、夢中になって滑っていたら、やがてみんなもインラインスケートを取り出し始めた。えええーっ!スケートも人数分用意してあるのー!!!すっげえ驚いた。さっきは部屋でスケートなしで踊ったが、今度はちゃんとスケートを履いて踊るという。この日に備えて、みんなで夜の駐車場でスケートを履いて「パラダイス銀河」を踊り込んできたそうだ。予想以上に本格派(のバカ)である。
それにしてもインラインスケート7足といえばかなりの大荷物である。撮影機材や衣装だってある。どうして私はそんな大荷物が宿に運び込まれていたことに気付かずにいたのか?訊けばメンバーたちはそのためにかなり知恵をしぼったそうだ。
今回は2台の車に分乗していたのだが、私が乗らない方の車に前もってインラインスケートや撮影機材など大量の荷物を載せておいたうえで、2台の車が離れ離れになるための作戦が実行された。
日間賀島に程近い店でみんなで一緒に昼食を取ったのだが、食後その店から出てすぐ、運転していた大久保がトイレに行きたいと訴えたたため、私の乗っていた方の車だけ引き返したのである。そして、大久保のずいぶん長いトイレタイムの間にもう一台の車に乗っていたメンバーは宿に先着し、荷物を運び入れたのだった。
このずいぶん長いトイレタイムを私が不審に思ったりすることがないように大久保がとった作戦は、あらかじめ「いかに自分のお通じの状態が悪いか」を訴えておくというものだった。・・・・食事中えんえんとお通じの話ですよ!確かに作戦は成功したかもしれないが、犠牲にしたものも大きかったと言わざるをえない。
つづく