先日、映画『しゃべれどもしゃべれども』の試写会の司会をしてきました。会場は名古屋で唯一の寄席、大須演芸場でした。なんでそんなところが会場に選ばれたかというと、この映画が落語をテーマにしているからです。上映の前に、主役の落語家を演じた国分太一さんを舞台上にお迎えしてあれこれ伺いました。
相澤(以下、相)「いかがですか、老舗の寄席での試写会というのは?」
国分さん(以下、国)「外は相当風が強いんですけど、この中にいてもそれが感じられたんですよね。スクリーンが隙間風で前後に揺れたりして。やっぱり老朽化というか・・・ヒシヒシと伝わりますね」
相「1962年に建てられたものだそうです」
国「力道山が頑張ってるくらいの時代からあるわけですね」
相「昭和と共に生きてきた感じでございます」
国「洗濯機、カラーテレビ、えー・・・・・・・・・、などなど」
相「・・・・あと一つが出ませんでしたね」
国「残念です」
相「さて国分さんは今回映画の中で初めて落語に挑戦されたわけですけど、もともと落語に興味はお持ちだったんですか?」
国「全くなかったですね。一番最初に聞いた落語が長瀬君の落語でしたからね。タイガー&ドラゴンで・・・なんて話をしつつ今もまたスクリーンが揺れてるんですけど。・・・きょうは映画が見づらいかもしれません」
相「大丈夫です。・・・たぶん」
国「たぶんなんですね」
相「長瀬さんのほかにも山口さんも「林家三平ものがたり」というドラマに出てますし、TOKIOの皆さんは落語と縁があるんですよね」
国「5人中4人が落語しゃべっているという、不思議なバンドなんです。楽屋でも落語はやっぱり大変だ、なんて話が出てましたね」
相「皆さんどんなところに苦労されるんですか?」
国「お芝居と違って、一人で全部演じなきゃいけない・・・」
風の音が場内に響く。
国「すごい音でしたねー。ガタガタいってましたね」
相「今の音は二階席の方からでしたね。うわっ、ていう声も客席から出てましたけど」
国「一瞬みんなが僕の話を聞いていないのがわかりました」
相「皆さん、舞台上に集中して頂きたいと思います」
国「お願いします」
相「えーと・・・・・、何の話、してましたっけ?」
国「あれっ!一番近くにいる人が僕の話を聞いてませんでしたね。驚きですよ、それは!」
相「すいません」
国「お客さんならまだわかりますけど」
相「すいません、すいません。あ、そうそう。お芝居と違う面があってという話で・・、落語では顔の向きを変えていろんな人物を演じわけますよね」
国「かみしもを切るっていうんですけど、それは相当苦労しましたね。ずっとやってるとどっちの役がどっちの顔の向きかわからなくなったりするんですよ」
相「全部憶えるのにどのくらいかかりましたか?」
国「半月ぐらいですね。お風呂に入っている時や車で移動してる時もしゃべってみたり、とにかく頭にずっと落語を入れてましたね」
相「映画の撮影では実際にきょうのように寄席にお客さんを入れて落語のシーンを撮ったんですよね」
国「普段寄席で落語を聞いている人たちにエキストラとして来てもらったんですけど、その時点でハードルがあがってるわけですよね。その噺のどこが笑う場所かわかってるわけですから。相当プレッシャーになりましたね」
相「逆にその人たちの笑い声に乗せられたりはしなかったですか?」
国「前半は緊張してほとんど覚えてないんですけど、後半は『ちょっと笑わせてみようかな』っていう欲がやっぱり出ましたね。これがたぶん落語なんだろうなって、演じながらわかってきましたね」
相「じゃあ、今後も落語を続けていこうと?」
国「勘弁して下さい」
相「それだけ苦労した作品ですから、完成したものはもちろんご覧になったんですよね?」
国「ギリギリまで見たくないと言ってたんですけど」
相「それはどうしてですか?」
国「自分がこんな大きなスクリーンでお芝居をしてるのは恥ずかしいなあという気持ちが強かったんです」
相「初めての単独主演映画でしたよね」
国「(耳を手でふさいで)やめて下さい、その言葉!なかなかそういう言葉に慣れていないので」
相「慣れていきましょうよ」
国「いや、無理ですよ。失禁しそうです」
相「舞台上ではやめて下さい」
国「じゃあ、舞台袖で・・・・」