三番目に運転席に座ったのは山崎だった。
私は助手席で山崎のiPodを操り、DJを担当した。DJといっても好きな曲を流すだけだけど。
山崎のiPodには最新のヒット曲からお洒落な洋楽まで網羅されていたが、DJ相澤にとってゴキゲンなナンバーといえば80年代のアイドルの曲である。
ゴキゲンな相澤とは対照的に静まり返る後部座席。
「この曲も・・・・知らないっすねー」
後部座席の岸本と仁村は私より9歳だか10歳だか年下であった。
確かにジェネレーションギャップはあるだろうが、流れていたのは小泉今日子さんのベストアルバムだ。超有名な曲ばかりだ。いくら岸本と仁村が若いからといって知らないわけがない。試しにイントロクイズをしてみることにした。
・・・・・・イントロクイズにならなかった。
小泉今日子さんの曲は「ヤマトナデシコ七変化」「渚のハイカラ人魚」「艶姿ナミダ娘」「スターダストメモリー」「夜明けのミュウ」など、歌い出しから潔く単刀直入にタイトルそのままの曲が多いのに、そこまで聴いても「わかんないっすねー」しか言わないのだ。
やっぱり知らないということなのだろう。
もっともそのあと「ヤング限定問題」として、気志団、湘南乃風、大塚愛、オレンジレンジでも出題してみたが、やっぱり一問も正解できなかったので、単に古い曲だから知らないということではないようだ。
富士宮で東名高速を降りて、白糸の滝を見に行く。
「どこに隠れてるんだ・・・・」
もうかなり近くまで来ているはずなのに、雲が多くてここまで富士山の姿を見ることが出来ずにいた。
ところが、滝を見て駐車場に戻ってくると雲がだいぶ少なくなっており、私が予想していたところより、その倍も高いところに、青い頂きがすっと見えた。おどろいた。やっていやがる、と思った。
これからあの大きな山の五合目まで登るのだ。我々は売店でご当地限定の「お茶・わさびポテトチップス」を購入した。登るにつれて膨張していくであろうポテトチップスの袋を観察するためである。
つづく