テレビ愛知

≪ 河口湖でブラックバスを釣ろう その4 | メイン | 河口湖でブラックバスを釣ろう その6 ≫

河口湖でブラックバスを釣ろう その5

ポテトチップスの袋はみるみる膨らんだ。一度、本来の目的を忘れた仁村の手によって開封されかけたが、無事五合目到着時にはパンパンになった。

「富士山は近くで見るより遠くで見た方がずっといいなあ」
わざわざここまで登ってきた意味を全否定するようなコメントが山崎の口から漏れた。
今年の初冠雪はまだなので、富士の頂きはまだ赤茶色だった。それでも五合目まで来るとかなり寒かった。観光客たちはジャンパーやウィンドブレーカーを着込んでいた。私も長袖シャツの上に上着を着て、ファスナーを首下まで上げた。
「こんなに寒いのにアイス食ってるバカがいますよ」
そういう岸本はTシャツ一枚しか着ていない。どっちがバカなのか。

富士山を降りて、スーパーでバーベキュー用の食材を買い、コテージへ向かう。
コテージは何棟もあったが、バーベキュー場は一箇所で、そこに宿泊客たちが集まり、各グループごとにテーブルを囲んでいた。
我々の周りは皆20代前半の若者グループだった。グループ交際祭りである。若い男女の恋の駆け引きが、酔いが回るにつれて露骨になっていく。
羨ましい。
自分も若いうちにそういうことしていたなら「俺も昔はあんな感じだったなあ」と笑って見守ることができるはずだが、「なぜもっと若いうちにバーベキューとかしなかったんだ」と隣のグループを横目で見ながら、ずっと後悔し続けていた。


やがて隣のグループはホイルに包んだ食べ物を出してきて、鉄板の上で焼き始めた。これもまた羨ましい。我々のグループにはそういう下準備をしてくる者はいなかった。味付けはスーパーで買った焼肉のタレ一辺倒であり、おまけにペース配分を間違え過剰にソーセージを用意してしまい、最後の方は飽き飽きしながら無理やり口に運ぶ状態になっていた。

バーベキューを終え、コテージに戻る。
山崎がギターを持ってきていたので、みんなで歌を歌った。最初の曲は私のリクエストで松田聖子さんの赤いスイートピーだった。

「何で赤いスイートピーなの~?」
仁村に突っ込まれた。
何でだろう?
もしかしたら、さきほどのグループ交際への羨ましさが私にこの曲を選ばせたのかもしれない。ああいう恋の駆け引きをエンジョイできないタイプの私。付き合った日から半年過ぎても手も握らないような、恋愛に不器用な男を賛美するこの曲を自分への応援歌にしたかったのだろう。

歌っているうちに気持ちよくなり、そのままコテンという勢いで眠りにつく。
「明日の起床時間は8時ね」
山崎が高らかに宣言した。
あれ?5時って決めてなかったっけ・・・。

旅の前のミーティングで山崎が「出発時間が決まればほとんど決まったようなもんだ」と言っていたが、確かにその通りと言えるかもしれない。あのミーティングで決まったことのうち、実現したのは、結局出発時間だけである。


つづく

アナウンサーの動画を見る!

プロフィール

【最近面白かった漫画】
「三月のライオン」
「とめはねっ!」
「宇宙兄弟」
「モテキ」
「へうげもの」
「もやしもん」
「こさめちゃん」
「犬のジュース屋さん Z」

【好きな言葉】
「振り向くな、振り向くな、後ろには夢がない」(寺山修二)
「しゃかりきコロンブス」(光ゲンジ)

【担当番組】
ニュースデータで解析!サンデージャーナル、特番など

バックナンバー



RSS:このブログのフィードを取得
もっともっとバックナンバー
テレビ愛知HPトップへ!
Copyright©Aichi Television Broadcasting Co.,LTD. All rights reserved.
注意事項:このWEBサイトに掲載されている文章・写真等の著作権はテレビ愛知およびその他の権利者に帰属しています。
無断での転載・再配布などはご遠慮ください。