翌朝。結局ブラックバス釣りを始めた時にはすでに10時半になっていた。
手漕ぎボートで2時間ほど河口湖の上で揺られたところで帰る時間になった。私は友人の結婚式の2次会パーティーの司会をするために夕方までに名古屋に帰らなければいけないのだ。でも、メンバーの中でただ一人ブラックバスを釣り上げた岸本はまだ名残惜しそうだった。
「そんなに急いで帰らなくても、司会が来なきゃ始まりませんから大丈夫ですよ」
「120人を待たせるわけにはいかないよ」
「俺なんかイベントで4万人待たせたことがありますよ」
山崎も世にも恐ろしい過去を披露して、名古屋への出発時間を遅くしようとするが、断固拒否した。万が一渋滞でもしてたら大変だ。
こんなに誠実に時間に遅れないようにしたのに、河口湖でかなり日焼けして赤い顔をしていたために「相澤さん、始まる前から飲んじゃダメですよー」とパーティー会場で何人にも言われてしまい、非常に心外だった。
相変わらずの巧みなマイク捌きでパーティを盛り上げ、充実感を得ることが出来たが、それとひきかえに河口湖に行った他のメンバーには迷惑をかけてしまった。自分の都合に合わせてわずか2時間で今回のメインイベントのはずのブラックバス釣りを強制終了させたのだ。
申し訳ないなーと思っていたが、3連休が明けて出社すると会社の先輩に「連休中の旅行メチャクチャ楽しかったって、岸本から聞いたぞ」と言われ、ほっとした。よかった。満足してくれていたみたいだ。
「岸本のヤツ、熱弁ふるってたよー『最高でしたよ、琵琶湖』って」
おしまい
(今回掲載した写真は全て仁村カメラマンの作品です)