サイパンのホテルにチェックインしたのは午前2時半だったが、翌朝7時半にはダイビングショップから迎えが来ることになっていた。なかなかのハードスケジュールである。
初日は朝から不安と期待の間を行ったり来たりしていた。一体どんなメンバーと一緒にダイビングライセンス取得講習を受けることになるのだろう。
以前「どうせ海の中じゃ一人」と書いたが、実際のダイビングでは必ず二人一組で潜ることになっている。コンビを組む相方のことをバディと呼ぶのだが、このバディ次第でダイビングは楽しくもつまらなくもなる。ナイスバディだといいなー、でへへとオヤジくさく期待する私の前に現れたのは、リエさんという20代の女性だった。
私以外の受講生は彼女だけだったので、「もしかしてお一人様か?」と思ったが、そうではなかった。彼氏も一緒にサイパンに来ているのだが、彼氏はすでに上級ダイバーであり、別行動でダイビングを楽しんでいるという。そして明日の午後、彼女がライセンスを取ったあとで一緒に潜る予定だそうだ。いいなー。
ともあれ、インストラクターも一応女性だったので、私としては両手に花であった。大変失礼ながら「一応女性」と表現させて頂いたのは、このインストラクターの方は、「チカ子」という名前なのに、自ら「チカ夫」と名乗るほど男勝りな人だったからだ。
チカ夫さんは私のことをいきなりファーストネームで「ノブさん」と呼んだ。出会った瞬間からフレンドリーに心を開いたお付き合いをするのがダイバーの流儀らしい。そうやって初めから親しくなっておかないと、いざという時に海の中で助け合えないからだろう。
おかげで一人で潜りに出かけても淋しい思いは全くしない。やはりスキューバダイビングは素晴らしいと、まだ潜ってもいないのに結論づけたのだった。
つづく