午前中プールで基本技術を教わったあと、昼食をはさみ、車でビーチへ向かう。
ビーチまでの30分間はおしゃべりタイムであった。私としてはまずこのことをチカ夫さんに確認しておきたい。
「一人でサイパンに行くって言ったら会社で変人扱いされたんですけど、ダイビングの世界じゃそんなに珍しくないですよね?」
「そうですね。結構お一人で来られる方多いですよ」
「私の彼も一人で潜りに来たことあるって言ってましたよ」
リエさんも続ける。ホラね!一人でも全然問題ないのよ。そりゃ一人より二人の方がいいかもわかんないけど・・・。
「ノブさんは彼女さんとかいないんですか?」
「いないです。もう長いこと・・・・」
「欲しくないんですか?・・・・あ、その前に一応確認しますけど、別に男性の方が好きとかそういうことではないんですよね?」
あーあ、確認されちゃった・・・。この歳で一人だとそういう疑惑を持たれてしまうのもしょうがないことなのか。改めてここで声を大にして言おう。
「俺は女が好きだーっ!!」
「じゃあ、私が合コンをセッティングしましょうか?」
心優しいリエさんから素晴らしい申し出があった。
「私の周り、フリーの子がいっぱいいるから、何だったらダブルヘッダーも可能ですよ」
一晩で2チームも対戦相手を用意してくれるというのである。六本木の会社にお勤めのリエさんと合コンということは、東京まで出かけなくてはいけないということになるが、ダブルヘッダーであれば新幹線代も十分ペイできる気がする。
「ノブさんは、芸能人でいうとどういう女性がタイプなんですか?」
合コンに参加するわけでもないのにチカ夫さんが聞いてくる。
「・・・眞鍋かをりさん・・・・」
この歳で理想のタイプの芸能人を挙げるのって、いつまでも夢見ているような感じがしてちょっと恥ずかしい。
「私は大沢たかおさん」
こちらから聞いた憶えはないが、チカ夫さんが理想のタイプを発表した。
「映画でウィンドサーファーの役をやった時に、サイパンで練習してたんですよ。ずっと沖のほうで練習してたんですけど、私はビーチの水に浸かって、今同じ海に入ってるーって、それだけで大満足でした」
「あー、その映画のキャンペーンで名古屋に大沢さんがいらっしゃって、インタビューしましたよ。監督さんと、共演の伊東美咲さんと一緒のインタビューだったんですけど、大沢さんがみんなを引っ張って和気藹々としたムードを作っているっていう感じがしましたね」
「やっぱり!!絶対いい人だもん、あの人!うわー、なんか楽しくなってきたあー。そうだ!明日みんなで打ち上げ行きましょう!!」
あっという間の急展開。
どうですか、S先輩!サイパン到着後わずか12時間で私は合コンと飲み会を手に入れましたぞ。
つづく