午後の講習の舞台はラウラウビーチであった。
ラウラウは現地の言葉でギザギザを意味する。海岸線が入り組んでいるということだろう。したがってサイパンでは「ギザギザハートの子守唄」は「ラウラウハートの子守唄」ということになる。「ハートの子守唄」の部分の現地の言葉は・・・・知らんがな、そんなもん。
ビーチからダイビングスポットまでは一本のロープが張ってある。そのロープをグイグイ辿りながら水の中を進んでいく。すでにこの時点で水深は4~5mあり、熱帯魚も沢山見られるのだが、ダイビングが本格的に始まるのはロープが途切れたところからである。
ロープが途切れた向こう側の水深は8m。水の色は一層青くなり、水温も幾分ひんやりと感じられる。
水深5mまでは、いわゆる体験ダイビングでも潜れる深さだが、ここから先は違う。その別世界へ思い切って突き進んでいくドキドキ感。そしてそんな私をアジ玉が迎えてくれた。
アジ玉とは、ギュギュギュと密集して巨大な一つの塊と化したアジの群れのことである。ミラーボールのごとく、あちこちがキラキラと輝いている。いきなりスゴイものを見てしまった。
アジ玉はたぶん見られると事前にチカ夫さんも言っていたが、そのチカ夫さんが「おそらく見られないでしょう。何かと忙しいみたいで・・・」と言っていたウミガメさんまでお忙しい中ご登場頂いた。しかも2匹も。何とラッキーなのだろう。サイパンの海に歓迎されている気がした。
赤や黄色や青やピンクやオレンジの熱帯魚たちも次々に現れて、歓迎の舞を披露してくれる。ディズニーアニメの白雪姫なんかで、姫が森で歌っていると次々にカラフルな小鳥やリスたちが姫の周りに集まってくるシーンがあったと思うが、まさにあんな感じ。魚たちがすぐ目の前をヒラヒラ泳ぎ続ける。
そして、何より楽しいのはあの浮遊感だ。スキューバダイビングでは肺を魚の浮き袋のように使う。息を吸って肺を膨らませると浮かびあがり、息を吐いて肺を縮ませると沈む。自分の息づかい一つで浮き沈みが自由に出来るようになってくると、まるでエスパーになって自由に空を飛んでいるような気がしてきて、楽しさのあまり海の中で叫びそうになる。
「超ヤバイっす!」
20代前半の若者のような言い回しが頭に浮かんだのは、胸のときめきが私をグッと若返らせたからだろう。
つづく